#小説

池井戸潤「下町ロケット ヤタガラス」

池井戸潤の下町ロケットシリーズ「ヤタガラス」読了。TBSテレビでドラマを見た小説なので、ストーリーが頭にあることもあり、スイスイと読める作品。尤も、池井戸作品はどの作品も読みやすいのですが。 しかし、池井戸作品はドラマ性があるというか、ほと…

姫野カオルコ「彼女は頭が悪いから」

姫野カオルコさんの小説「彼女は頭が悪いから」読了。3年前に発生した院生を含む東大生5人が、他大学の女子大生にわいせつ行為をして、強制わいせつ罪で有罪判決を受けた事件を題材とした作品。事件の概要を見ると、ほぼその通りのストーリーで描かれてい…

短篇ミステリー小説「現場に臨め」

当代一流の推理作家の短編集、日本推理作家協会編「現場に臨め」読了。 15名15編の短編推理が楽しめるもので、いずれ劣らず読み応え十分の作品集。すべての感想を書くとたん変な長編ブログになるので、一遍だけお気に入りを紹介したい。 新津きよみさんの「…

池井戸潤「民王」

池井戸潤の「民王」読了。 本日7月7日からTBSテレビの日曜劇場でまたまた池井戸潤作品「ノーサイドゲーム」がドラマ化され放映されます。「池井戸作品は枯れることがない」との新聞のコメントがありましたが、TVドラマ、映画でも引っ張りだこ。「ノーサイ…

池井戸潤「BT’63」、「鉄の骨」

池井戸潤「BT’63」と「鉄の骨」読了。 「BT’63」は上下巻800ページ以上の長編作で、躊躇していましたが、その読みやすさとストーリーの面白さに、難なく読み終えた次第。 現代に生きる大間木琢磨と彼の亡き父史郎のW主人公の、過去と未来を巧み…

池井戸潤「不祥事」

花咲舞が活躍する第一作「不祥事」再読。もうかなり前に読んだ記憶はありますが、ほとんど覚えていないことをまずは実感。最近の記憶力の低下は甚だしい限り。認知症が近いのか?認知症にならないためにも、できるだけ思い起こして書くことに熱中するように…

池井戸潤「花咲舞が黙ってない」

池井戸潤「花咲舞が黙ってない」読了。花咲舞が活躍する同名のテレビドラマの原作は「不祥事」だったのですが、さすがにテレビの影響力はすごく、池井戸さんが読売新聞に連載した同じ花咲舞の活躍する小説のタイトルは「花咲舞は黙ってない」になってしまい…

池井戸潤「下町ロット ガウディ計画」「ロスジェネの逆襲」

本の文字が頭に入らないときに、それを解消するために読んで効果があるのが池井戸潤作品。久しぶりに池井戸作品二題読みました。その効果は抜群。あっという間に読了できました。 「下町ロケット ガウディ計画」はご存じ大田区の中小企業でありながら、最先…

辻村深月「家族シアター」

いま最も乗っている女流作家のひとり、辻村深月さんの「家族シアター」読了。お恥ずかしながら、直木賞作家でありながら読むのは「つなぐ」以来2冊目。「かがみの古城」を図書館に予約中ですが、なかなか回ってこない状態。 今回は短編集の「家族シアター」…

中村文則「掏摸」

中村文則「掏摸」読了。純文学と言われる芥川賞作家の作品は、私の頭ではどうしても理解が追い付かず敬遠しがちで、受賞者の作品を読むのは吉田修一作品以来でしょうか(又吉の「火花」も未読)。吉田作品にしても、ほぼほぼ大衆文学的な作品ばかり。 さて、…

朝井まかて「雲上雲下」

朝井まかて「雲上雲下」読了。今や歴史小説の第一人者となりつつある朝井まかてさんですが、この作品は一風変わった、民話風作品の寄せ集め集といったところでしょうか。 「団子地蔵」は、転がった団子を追いかけた爺さん婆さんが、大きな伽藍堂に迷い込み、…

奥田英朗「我が家のヒミツ」

奥田英朗さんの「我が家のヒミツ」読了。6つの家族のヒミツというほどではないものの、それぞれの家族に起こった事象を軽妙に綴った短編作品集。 「虫歯とピアニスト」は、歯科医院で事務をしている敦美さんが、自身も好きな有名ピアニストが来院したことか…

中島京子「妻が椎茸だったころ」

中島京子さんの短編「妻が椎茸だったころ」読了。薄い本なので、一冊だけ持ち四万温泉の域帰りのバスで読むことができました。ただ、バスに乗っていると、どうしても眠くなってしまうことから、なかなかページが進まないのが難点。毎日の通勤電車ではスイス…

中島京子「平成大家族」

中島京子さんが平成18年ごろに書いた作品「平成大家族」読了。70歳で歯医者さんを辞め現在72歳の家族の当主一家は、夫婦と引きこもりの息子、老母の4人暮らし。ところが長女の夫が事業がうまくいかず自己破産して親子3人が転がり込み、次女が離婚して転が…

奥田英朗「我が家の問題」

私の好きな作家のひとりでもある奥田英朗「我が家の問題」読了。書名の通り、6つの家族の中で起こっている家族問題をユーモアと、そして若干のミステリーも含んで、奥田さんらしい筆致で描かれた短編集。ほぼ完結している作品もあれば、「これからどうなる…

薬丸岳「Aではない君と」

薬丸岳づいている今日この頃。彼の長編「Aではない君と」を読了。薬丸岳作品は、処女作の「天使のナイフ」がそうであったように、実際にあった少年犯罪をベースにした作品が多いのが特徴ですが、この作品も神戸であった14歳の幼女殺害事件がベースになって…

薬丸岳「その鏡は嘘をつく」

薬丸岳の夏目刑事シリーズの長編書き下ろし作品「その鏡は嘘をつく」読了。「刑事のまなざし」で鮮烈デビューを果たした夏目刑事を主人公とした作品。この作品では、W主演として志藤検事も登場し、両者がそれぞれ別の事件を追っているうちに、それが結びつ…

薬丸岳「刑事の約束」

薬丸岳の夏目刑事シリーズ第4作「刑事の約束」読了。短編連作集ですが、どの作品も読みやすく、そして夏目刑事の人間を見る鋭い視線が描かれている作品。 「無縁」は戸籍のない少年とその親代わりの男を描く。万引き容疑で捕まった少年の身元は沈黙を押し通…

古処誠二「いくさの底」

第71回日本推理作家協会賞受賞作、古処誠二「いくさの底」読了。太平洋戦争時の日本のビルマ侵攻時、とあるビルマの山間の小さな村に駐屯した日本軍の少人数の守備隊の隊長が殺された事件を主事件として、戦争における軍隊の統率の在り方、侵攻した土地の…

深水黎一郎「人間の尊厳と八〇〇メートル」

深水 黎一郎「人間の尊厳と八〇〇メートル」読了。6年前に日本推理作家協会賞短編部門受賞の表題作を含めた5編の短編集。深水黎一郎氏は初めて聞く名前で、もちろん読むのも初めて。 ミステリーの範疇も相当広くなっているのを感じますが、特にこの作品は…

薬丸岳「刑事の怒り」

薬丸岳の夏目刑事シリーズ作品「刑事の怒り」読了。夏目シリーズを読むのは「刑事のまなざし」に次いで2作目。夏目刑事は、犯罪で意識不明の重体になった娘さんを、奥さんと二人で必死に育てている優しい人で、かつ犯罪に対する鋭い嗅覚を持つ名刑事。「刑事…

塩田武士「罪の声」

塩田武士「罪の声」読了。塩田作品は初めてで、2016年の週間文書ミステリー小説第一位になったことを知ったので、外れはないだろうと思い読み始める。 内容は、日本で最初の劇場型犯罪と言われたグリコ森永事件を題材に、その犯人像を想定して、事件推移はほ…

長岡弘樹「教場」

長岡弘樹作品「教場」読了。長岡作品を初めて読んだのですが、なかなか味のある作品でありました。 舞台は警察学校で、新たに警察官として採用された人の新人研修での出来事をつづります。なるほど、警察官の研修というものはこういうものかと教えてくれる内…

米沢穂信「真実の10メートル手前」

米沢穂信のおなじみ、大刀洗万智を主人公とした短編小説集「真実の10メートル手前」読了。 短篇小説はどうしても記憶に残りにくく、最後の作品を読み上げて、最初の作品を思い返してもストーリーがよく思い出せない今日この頃。家族からも言われるのですが、…

角田光代「薄闇シルエット」

角田光代「薄闇シルエット」読了。アラさー女子の心の内を丁寧に描いた作品というべきか。 37歳のハナさんは大学からの親友チサトさんと下北沢で古着屋を経営。従業員も雇いそこそこ成功している。二人とも独身ながら、チサトさんはバツイチ、ハナさんには恋…

奥田英朗「バラエティ」

久方ぶりに奥田英朗の短篇集作品「バラエティ」読了。著者があとがきで書いているように、編集者が小説雑誌のシリーズものにすべく人気作家に書いてもらったものの、残念ながらシリーズ化されなかった作品を集めた単行本の短篇集。確かにシリーズにして連作…

阿刀田高「だれかに似た人」

阿刀田高作品「だれかに似た人」読了。短編小説の魔術師らしく、10篇いずれも短編らしいウィットが入って、さすがと思わせます。 「Y字路の街」は、事業に失敗した男と、過去に傷を持つ女が、同じ函館行きの飛行機に乗り、函館で再開して親しくなる話。男女…

西加奈子「しずく」

西加奈子さんの作品を読むのは初めて。直木賞作家となり実力者であることは間違いないでしょうが、さてどんな作品を書くのか。 今回読んだのが「しずく」という短編集。表題作含め6作品からなっています。 印象に残った数編を紹介。 「灰皿」は、最愛の夫を…

荻原浩「海の見える理髪店」

荻原浩が直木賞を受賞した短編作品集「海の見える理髪店」読了。表題作はじめ全6篇はいずれも読みごたえのある作品。特に表題作がやはり代表格でしょうか。 表題作「海の見える理髪店」は、ある青年が海岸沿いの理髪店に来たところから始まる物語。口コミで…

浅田次郎「長く高い壁」

浅田次郎先生作品「長く高い壁」読了。浅田先生得意の中国もの。ただ、主人公は中国人ではなく日本軍人。1938年の中国北京近く、万里の長城がある「張 当時の日本軍の中国侵略を時系列に追ってみましょう。 1931年:満州事変勃発、南満州鉄道が爆破…