2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

馳星周「少年と犬」

馳星周さんについては、「ソウルメイト」を読んで感動したのですが、それ以来の読書。本作「少年と犬」は直木賞受賞作品ですで読むのが遅くなりましたが、受賞に納得の感動作でした。 本作は6篇の連作短編で、いずれも「オール読物」に連載されたのですが、…

小川糸「食堂かたつむり」

小川糸さんの作品は初めて読みましたが、優しいタッチの人情ばなしがお得意なのか、あるいは料理にまつわる話が得意なのか、これから読み込んでいきたいと思いますが、本作「食堂かたつむり」は上記のいずれも含まれるほのぼのとしたお話。 主人公の「私」は…

「大河原化工機事件」における警視庁公安部の捜査に断罪を

2023.09.24(日)NHKテレビにて「冤罪の深層 警視庁公安部で何が」のドキュメンタリーが放映され、興味深く鑑賞。観ていてはらわたが煮えくり返る思いを持つ、極めて悪質な捜査が行われたことが語られる。 冤罪の対象になった大河原化工機さんは、社員90人ほ…

映画「キリング・オブ・ケネス・チェンバレン」

アメリカの闇というべき白人警察官による黒人への暴行・殺人がいまだに後を絶たない。本作「キリング・オブ・ケネス・チェンバレン」は、2011年11月9日にニューヨークで実際にあった事件を、90分という実際の事件の時間過程をそのままノンストップで撮り上げ…

映画「さらばわが愛 覇王別姫」

中国清朝末期から日中戦争、国共内戦、文革という激動の社会に生きた京劇俳優二人の人生を描いた香港・中国・台湾合作映画「さらばわが愛 覇王別姫」を下高井戸シネマにて鑑賞。1993年製作で、中国が1989年に発生した天安門事件を経て、改革開放まっしぐらで…

永井紗耶子「木挽町のあだ討ち」

永井さんの直木賞受賞作であり、現時点での永井さんの最高傑作と思われる「木挽町のあだ討ち」読了。本作は、木挽町という芝居小屋のある町を舞台として、そこで15歳の美少年剣士が、父親の仇を討つという大きな主題を軸に、この美少年剣士があだ討ちを果た…

湊かなえ「リバース」

久しぶりの湊かなえ作品「リバース」読了。 主人公の深瀬和人は、現在小さな事務用品店で働く26歳ぐらいの男性で、外回りの営業を担当。よく行く営業先の一つに大学のゼミ仲間だった浅見康介が教師をしている高校があり、ちょっとした事務用品の注文にもこま…

柚木裕子「ミカエルの鼓動」

柚木裕子さんが医療、とくに最先端手術に関わる問題に取り組んだ作品「ミカエルの鼓動」読了。470Pの長編ながら会話が多い分、分量としてはそれほどの長編とは感じませんが、それでも広範囲に話を広げている分、分量が多くなった作品。 主人公はミカエルとい…

永井紗耶子「女人入眼」

永井さんの鎌倉時代初期の京と鎌倉を舞台にした歴史小説「女人入眼」読了。主人公は京都の六上殿に仕える周子。彼女は京の朝廷内で勢力を二分する一人である丹後局の部下で、丹後局から鎌倉幕府と朝廷の絆を強めるための姻戚関係を作るため、頼朝と政子の娘…

2023年9月信州田澤温泉旅行

9月7日(木)~8日(金)の一泊二日で信州上田の田澤温泉に妻と一緒に小旅行。 昨年は上田の別所温泉に行きましたが、今回は青木村にある田澤温泉という静かな温泉。田澤温泉という名前さえ知らなかったのですが、じゃらんで検索しているうちにたどり着いた…

今年の映画鑑賞を振り返る(2)

モロッコ映画「青いカフタンの仕立て屋」:珍しいモロッコ映画ですが、情緒ある映画。夫婦は結婚衣装など、伝統的で豪華な衣装の仕立て屋を営むが、子供はおらず、奥さんは何やら病気がち。伝統的な技を継承するため若い男性を雇い、彼はなかなかの腕を持つ…

映画「あしたの少女」

本日はシネマート新宿にて韓国映画「あしたの少女」鑑賞。韓国で法律改正の切っ掛けにもなった話題の映画で、韓国の過酷な競争社会と労働環境を厳しく糾弾する内容。 韓国の一流大学への厳しい入試競争はあまりにも有名ですが、高卒で就職する生徒ももちろん…

映画「福田村事件」

数々の社会派ノンフィクション映画を手掛けてきた森達也監督が、初めて劇映画を渾身の力をかけてつくったのが本作「福田村事件」。ちょうど100年前に発生した関東大震災時の禍々しい事件である福田村における日本人行商人9名の殺人事件を、今日への強い警鐘…