姫野カオルコ「彼女は頭が悪いから」

姫野カオルコさんの小説「彼女は頭が悪いから」読了。3年前に発生した院生を含む東大生5人が、他大学の女子大生にわいせつ行為をして、強制わいせつ罪で有罪判決を受けた事件を題材とした作品。事件の概要を見ると、ほぼその通りのストーリーで描かれているようなので、ノンフィクション的な小説にも読めます。
この小説が発刊され話題となり、当の東大駒場キャンパスで、姫野さんを迎えてシンポジウムがあり、それに参加したことから、いずれは読もうと思っていたのですが、やっと読み終わりました。
「東大」というブランドを利用する男たち、そのブランドに群がる女たちという構図を浮かび上がらせていますが、被害女性の屈辱はいかばかりだったか。特に偏差値の低い大学という劣等感を持つ女学生が、本気でお互いに恋していると思い込むことに罪はないはず。それにもかかわらず、男は自由に女を操れると思っている傲慢さが描かれており、東大生としては心外な面があるでしょう。シンポジウムでも異論がいくつか出たように記憶していますが、一部には自分たちを選良だと勘違いしている学生あるいは卒業生がいたとしても、あながち見当違いとは言えないでしょう。
そんな東大出の官僚や裁判官が、日本の行政、司法を支配していると思うとぞっとします。東大から見れば、まさに「頭が悪い下々」が、文書改ざんを命じられて下級官僚が自殺しようが、警察・検察の言いなりに、ろくにその「いい頭」を使わずに判決を下し、冤罪を是認してしまおうが、何とも思わないのでしょう。目指すは我が身の出世のみ。この事件の被害者同様、我々庶民もたまったものではない世の中です。
この小説の痛快なラストの方の一節、犯人の母親が、退学以外の示談の方法を被害者女性の大学の教授に聞いた時の答え、「息子さんを含む事件に関わった5人のダイン詩学生の前で、あなたが裸になり、肛門に割り箸を刺して、ドライヤーで性器に熱風を当てて見せるから示談にして、お申し出になってみてはいかがですか」(これは被害女性が実際にされたこと)
まさにその通りだと思った次第です。
今日はこの辺で。