池井戸潤「不祥事」

花咲舞が活躍する第一作「不祥事」再読。もうかなり前に読んだ記憶はありますが、ほとんど覚えていないことをまずは実感。最近の記憶力の低下は甚だしい限り。認知症が近いのか?認知症にならないためにも、できるだけ思い起こして書くことに熱中するようにしています。
さて、この作品も花咲舞が活躍する痛快作で、世も始めたらすぐに次を読みたくなるほどの面白さ。連作短編8作を簡単にご紹介。
「激戦区」は、まずは花咲舞と相馬が臨店グループで再開する場面から始まり、銀行激戦区の自由が丘支店での出来事。ベテラン女性行員をコストとしか見ない支店幹部とそれに抵抗する一ベテラン女性行員。そんな支店の体質に怒りを覚える花咲舞。
「三番窓口」は神戸の三宮支店が舞台。3千万円の借金を背負った男が仕組む銀行詐欺を直前に阻止する花咲舞のお見事。支店長がグルだったとは。
「腐魚」は、超忙しい新宿支店が舞台。伊丹百貨店はおそらく伊勢丹?をもじったものか。その伊丹百貨店の御曹司が新宿支店に勤務し、傍若無人の振る舞い。あわや取引先が不渡りを出しそうになるようなことをしでかす、どうしようもない男。これを厳しく糾弾する花咲舞。この伊丹行員は、その後もこの物語に出てきます。
「主任検査官」は金融庁検査が入った武蔵小杉支店が舞台。とある電機メーカーの信用不安をかぎつけている憎々しき検査官が、そこに融資している証拠を探すために、女子行員のロッカーまで探るが、花咲舞の働きで間一髪。国税調査が入る前には、私もよく女子社員のロッカーにまずい書類を隠したもんです。
「荒磯の子」は、臨店ではなく、退職社員の一時的な補充に行った蒲田支店が舞台。ここでも本店の真藤常務一派の支店長が花咲、相馬に対して嫌がらせをし放題。支店長がらみの顧客が当座預金解説し、詐欺を働こうとするが、これまた間一髪花咲の働きでセーフ。支店長、副支店長の顔は丸つぶれ。
「過払い」は、窓口業務の現金照合で100万円の過払いが発生した原宿支店が舞台。とある中小企業の人相の悪そうな若社長に過払いしてしまった可能性が浮上。その若社長は否定し、混迷が深まるが、副支店長が内緒で自腹を切って、切らせてやり過ごそうとする。しかし、実は窓口女性の通帳の動きから花咲舞は犯人を突き止める。裏には男女の行員差別が。
彼岸花」は本店が舞台。真藤常務のところに彼岸花が元行員名で届く。真藤の部下がその真相を探るべく動き、送付したのが元行員の妻であることを突き止める。この話には花咲舞は出てこないのかと思いきや、花を送った妻が働く町田支店に臨店に行っていた花咲舞が真藤の部下に言って聞かせるのは、本当の銀行員とはどうあるべきかという訓示。
最後が表題作の「不祥事」。伊丹百貨店の給与振り込みデータ9,000人分が紛失。どこに消えたのか、はたまた盗まれたのか?この辺に来ると犯人は丸見えですが、花咲舞は盗まれた証拠を見つけ出す。
どの作品も痛快な花咲舞の活躍が読める快作でありました。
今日はこの辺で。