薬丸岳づいている今日この頃。彼の長編「Ａではない君と」を読了。薬丸岳作品は、処女作の「天使のナイフ」がそうであったように、実際にあった少年犯罪をベースにした作品が多いのが特徴ですが、この作品も神戸であった14歳の幼女殺害事件がベースになっているような作品。タイトルが「Ａでない・・」からもわかるように、神戸の「少年Ａ」による凶悪事件を設定を変えて描いています。
同級生を殺害した容疑で主人公の男性の子供が逮捕されます。証拠から少年の犯行に間違いない状況で、これが覆るようなミステリーはありません。自分の子供が重大犯罪を犯した時の親の苦しい感情や生活がどうなるのかという不安が克明に描かれます。また、少年はその動機や殺害状況を語ろうとしません。14歳の少年がここまで取り調べで何も話さないということ自体信じられませんが、そこはあくまで小説。読者は事件の裏には何か重大な秘密が隠されているのではないかと、胸が高まります。ネタバレになるので結末は記述しませんが、自分の子供が犯罪を犯したらどんなに苦しいかを切々と描くので、世の中の加害者家族のつらさを感じます。
神戸の事件では、犯人がすでに世の中に出ており、本を出版もしました。これに対しては大きな非難が巻き起こりましたが、実際に世間で働いていく困難さは少年Ａも持ったことでしょう。
今日はこの辺で。
