古処誠二「いくさの底」

第71回日本推理作家協会賞受賞作、古処誠二「いくさの底」読了。太平洋戦争時の日本のビルマ侵攻時、とあるビルマの山間の小さな村に駐屯した日本軍の少人数の守備隊の隊長が殺された事件を主事件として、戦争における軍隊の統率の在り方、侵攻した土地の住民との関係、更には当時の戦争相手でも会った中国軍の動向などを織り交ぜながら、ミステリー豊かな話となっております。
古処誠二については全く初めて聞き、初めて読む小説でしたが、2000年代初めには「遮断」、「敵影」で直木賞候補にも挙がっていた作家。
殺されるのは守備隊を率いた将校の賀川少尉と、賀川少尉と面識のあった村の村長。なぜこの二人が殺され、そして誰が殺したのか。最後にアッと驚く犯人像が浮かび上がってきます。そして、その動機。
全く想像できませんでした。
ビルマは現在はミャンマーと呼ばれ、最近ではロヒンギャ族の難民問題がクローズアップされていますが、敬虔な仏教国で、喜捨の習慣が根深くあり、大変に慈悲深い国民。仏教寺院の勢力がかなり強く、ロヒンギャ問題では、仏教指導者もロヒンギャ族には厳しい視線を浴びせているようなことを聞きました。
この小説の舞台となっているのは、中国とタイ国境に近いシャン族の村。ロヒンギャとは違い、同じ仏教信者の国で、迫害は受けていないようです。
今日はこの辺で。