朝井まかて「雲上雲下」

朝井まかて「雲上雲下」読了。今や歴史小説の第一人者となりつつある朝井まかてさんですが、この作品は一風変わった、民話風作品の寄せ集め集といったところでしょうか。
「団子地蔵」は、転がった団子を追いかけた爺さん婆さんが、大きな伽藍堂に迷い込み、そこで地蔵さんに会って小判をもらう話。
「粒や」は、働き者の子供のいない夫婦がタニシを子供代わりにかわいがって育て、そのタニシが働き者に育ち、やがて嫁まで嫁いでくる。やがてそのタニシは立派な青年に変身!
「亀の身上がり」は、まさに竜宮城の話。竜宮城では姫が重い病にかかり、亀は祈祷師のお告げの通り猿を地上から連れてくる役目を仰せつかる。猿は肝を取られることも知らずに歓待を受けるが、次第に地上が恋しくなる。姫は実は毒を盛られていたことを亀も知り一策を講じる。
「猫寺」は、さびれた寺に一匹の三毛猫が住み付き、和尚さんはその猫を大事に育てることに。やがてその猫は、猫たちにお経をあげることになり、その後寺のために大いに役立つことに。
「お花」は、この作品で最も心惹かれる話。母と二人で暮らす小太郎は働き者の青年に成長していく、そんな小太郎の前に、両親を亡くした娘、お花が現れる。二人はほのかな愛情を抱くが、お花が引き取られた村長さんは非常な人で、やがてお花は女郎屋に売られていくことに。この話は是非とも続編を聞きたかったのですが、それはありませんでした。
「湖へ」と「小太郎」は、小太郎が実は母親に拾われた子だと分かり、生みの親を探しに湖に向かい、湖に住む母親と会うことになる話。
「神々の庭」は、お伽衆と呼ばれる語りべの福耳彦命が、突然に話ができなくなり、弟子や周りの人たちを疑ってかかる話。
巻末に、各地の民話をたくさんの方から聞いたというリストがありましたが、朝井まかてさんの想像力とともに、民話の多さにも驚く次第です。
今日はこの辺で。