塩田武士「罪の声」

塩田武士「罪の声」読了。塩田作品は初めてで、2016年の週間文書ミステリー小説第一位になったことを知ったので、外れはないだろうと思い読み始める。
内容は、日本で最初の劇場型犯罪と言われたグリコ森永事件を題材に、その犯人像を想定して、事件推移はほぼ事実に即し、犯人像についてフィクションとして描いた作品。
実際の事件では、最初のグリコ社長誘拐から始まり、社長が解放されたことを持って事件自体は終結と思いきや、その後すぐに脅迫状が警察やマスコミに届き、その後1年半にわたって食品会社6社がターゲットになり、世間が大騒ぎになったもの。結局15年後に犯人が一人もつかまらないまま時効を迎えることになります。
小説では、脅迫の電話の声が子供であったことから、その子供が大人になり、脅迫のテープを探し出すことから話が始まります。一方の主役はその子供が大人になった青年、そしてもう一人の主人公は新聞社の記者。新聞社が事件から30年を経過したことを契機に特集を組むことになり、一人の記者が執念と運の良さから事件の犯人たちを特定していくことになります。
グリコ森永事件については、犯人グループに警察が接触しながら、数多の失敗が重なり、警察は多くの非難を浴びます。結局未解決事件となりますが、失敗の一つでもあった滋賀県警の犯人確保失敗もまたその一つ。これを受け、ノンキャリアながら滋賀県警本部長となった方が自殺したことも大きな話題になりました。この本部長自殺を契機として、最後の文書が警察に届き、犯人側は終結宣言をして事件は収束します。その後時効まで犯人探しが続きますが、未解決事件として時効を迎えることになります。
時効後にNHKが独自調査を行い、子供の声が実は二人であったこと、そして女性の声が30~40代のとされていたものが20歳前後と推定されることが番組で放映され、そこから塩田氏が事件に巻き込まれた子供と女性を手掛かりに小説を作り上げました。
文春ミステリーの第一位に位置付けるほどの作品かどうかは意見が分かれるところですが、最大の劇場型犯罪を思い出すには、いいチャンスとなりました。
今日はこの辺で。