2024-01-01から1年間の記事一覧

辻堂ゆめ「山ぎは少し明かりて」

辻堂ゆめさんはまだ32歳の若い作家。東大卒で既に何作かは文学賞の優秀賞やを受賞。「トリカゴ」では大藪春彦賞を受賞している有望作家。近い将来には直木賞を受賞する作家となることが期待されます。そんな辻堂さんの長編「山ぎは少し明かりて」は、女性三…

町田そのこ「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」

町田その子さんの初の単行本作品「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」読了。本屋大賞受賞作「52ヘルツのクジラたち」よりも3年前の作品で、緩やかな連作短編5作品が収録され、52ヘルツに似た匂いを持ち、これが町田その子さんの作風の原点かと思われる作品。 …

町田そのこ「52ヘルツのクジラたち」

2021年の本屋大賞を受賞した町田その子さんの「52ヘルツのクジラたち」読了。今の小説や映画は、いじめ、虐待、セクハラ・パワハラ、DV、ネグレクト、LGBTなど、人間間の差別や孤独を扱ったものが非常に多く見受けられるが、本作は、そのほとんどの要…

奥田英朗「リバー」

奥田さんが足利事件をモデルにして書いた大作ミステリー「リバー」読了。何せ650Pの大作であり、最初読むのを躊躇したが、読みやすい作家なのでとにかく読み始め、その通り読みやすかったため実質3日間で読了。足利事件は典型的な冤罪事件として、再審無罪と…

窪美澄「夜に星を放つ」

窪美澄さんが直木賞を受賞した記念すべき作品「夜に星を放つ」読了。「ふがいない僕は空を見た」と同じように、5編からなる短編ですが、本作は一作一作が全く別の話で構成された作品。ただし、両作品は何となく似通った作風で、こうした短編が窪さんの真骨頂…

窪美澄「ふがいない僕は空を見た」

窪美澄さんの初期の代表作と言われる連作短編「ふがいない僕は空を見た」読了。5つの短編からなる本作の主人公は、皆さん顔見知りの関係者で、それぞれ単独作ではありますが、つながった話になっているところが面白い魅力となっている。 ミクマル:高校1年生…

一穂ミチ「砂嵐に星屑」

「スモールワールズ」は一穂作品でも出色で感動しました。続いて一穂作品「砂嵐に星屑」読了。一穂さん自身が大阪出身で大阪在住ということで、大阪のテレビ局を舞台にした人間模様が4作の短編で描かれます。 (春)資料室の幽霊:大阪のテレビ局、なにわテ…

ペットとの別れと出会い

義理の弟が海外転勤するということで、飼っていたクサガメを2年間預かることに。最初は1匹だったのですが、もう一人の預け先の方も転勤で飼えなくなるということで、二匹を預かることに。我が家ではかつて猫をたくさん飼っていたのですが、死んでいくか、い…

一穂ミチ「スモールワールズ」

一穂ミチさんの、直木賞候補となった短編作品「スモールワールズ」読了。 6篇の短編からなる本作ですが、いずれの作品も感慨深いというか、読み応えのある作品でありました。 ネオンテトラ:主人公は既婚者でモデル業をやっている34歳の相原美和さん。彼女は…

2024年映画鑑賞のふり返り(1)

ギンレイホールからは、相変わらず会館のお知らせがなく、場所探しに苦労しているのかどうか?そんなわけで最近は地元下高井戸の下高井戸シネマが専門となりつつあります。 2024年第一四半期のふり返りは以下の通り。 「あしたの少女」:韓国映画は今世界中…

伊吹有喜「雲を紡ぐ」

伊吹有喜作品は初めて読むのですが、本作「雲を紡ぐ」で直木賞候補にもなったことのある女流作家。 主人公は山崎美緒さんという高校2年生の女性徒。学校でのいじめから不登校になり、部屋に引きこもっている。父親の広志さんは家電メーカーに勤める技術者、…

一穂ミチ「パラソルでパラシュート」

一穂ミチさんの作品は初めてですが、彼女自身は2022・2023年の本屋大賞にノミネートされ、惜しくも逃している人気作家。これから大いに期待されますが、今回はとりあえず図書館にあった「パラソルでパラシュート」。 東京生まれながら現在は両親と大阪に暮ら…

山田清機「寿町のひとびと」

寿町は日本三大ドヤ街と言われる、横浜市にある簡易宿泊所街である。大阪の西成(あいりん)、東京の山谷と並び称される、私自身は大阪と東京にドヤ街には行っているが、寿町はまだ足を踏み入れたことがない。山谷はそれほどのカルチャーショックはなかった…

古矢永塔子「ずっとそこにいるつもり?」

古矢永さんの小説は初めて読みますが、確か朝日新聞の書評欄に載っていたので、図書館に予約しておいたと思われる作品。5編からなる短編集ですが、大変味のある作品ばかり。 あなたのママじゃない:弥生さんは友樹さんと大学の映研で知り合いその後結婚。弥…

長岡弘樹「119」

読んで字のごとく、消防署の消防士を主人公とした短編作品。8作が収納されていますが、主人公はそれぞれ違う物語になっている連作短編。とある都市の消防署の分署を舞台に、そこで活躍する消防士の物語。 石を拾う女:漆間分署の救急班の指令を勤める今垣係…

唯川恵「みちずれの猫」

唯川作品は一時夢中になって読んだのですが、しばらく遠ざかっていました。今回手に取ったのが、猫が必ず重要なファクターとして登場する作品7編を収めた短編集「みちずれの猫」。いつ読んでも読みやすく、何らかの感銘を受ける作家です。 ミヤァの通り道:…

河崎秋子「肉弾」

直近の直木賞を「ともぐい」で受賞した河崎さん。北海道在住ということで、桜木紫乃さんのように北海道を舞台にした作品が多いようですが、「肉弾」もその一つ。しかも「ともぐい」と同じような人間と動物との闘いや関係をテーマとしているところは興味深く…

一泊二日の箱根旅行

昨年と同じく、3月の箱根旅行。昨年は天気が悪く、雨の中タクシーも捕まらない状況でしたが、今年は雪の予想ながら、何とか降られずに済みました。 3月8日(金)10:00新宿発のロマンスカーで箱根湯本乗換で強羅へ。急坂を上って強羅公園前の山路さんで昼食の…

万城目学「偉大なるしゅららぼん」

第17回直木賞を「八月の御所グラウンド」で受賞された万城目学さん。今回が6度目のノミネートでの受賞で、大変ご苦労様でしたと声をかけたい思い。私自身は今まで万城目作品は未読で、今回読んだのが「偉大なるしゅららぼん」。この作品は2011年の書下ろし作…

桜木紫乃「ヒロイン」

桜木さんが、オウム真理教事件で17年間逃亡生活を行った菊池直子さんをヒロインに見立て、架空の岡本啓美という女性が同じく17年間逃亡生活を行ったという話を作り上げた作品。 啓美さんは大阪に生まれ、バレー塾を経営する母親に厳しく育てられ、徹底的なバ…

辻村深月「琥珀の夏」

辻村さんの540Pの大作「琥珀の夏」をやっと読了。この作品は2019年3月から地方新聞数社に連載された作品で、単行本化が2021年6月なので、安倍晋三銃撃事件後に大騒ぎになった統一教会問題を想定したものではないのですが、何となく宗教的な団体を扱っている…

伊岡瞬「朽ちゆく庭」

都内の賃貸マンションから郊外の戸建住宅、それも敷地が50坪、2代のカーポートと庭付きの家に引っ越してきた山岸一家に起きた事件を主軸として、崩壊すれすれにある家族関係を描く「朽ちゆく庭」読了。 一家はゼネコンの現場監督で忙しくて家族との時間が少…

池井戸潤「民王 シベリアの陰謀」

池井戸作品も久しぶりとなりました。本作「民王 シベリアの陰謀」は、2021年5月に雑誌「小説 野生時代」にプロローグと第一章が掲載されましたが、何故かそれ以降は書下ろし。2021年5月と言えば、日本でのパンデミック発生から約1年後で、これからさらに感…

嶋津輝「スナック墓場」

島津輝という作家は、初めて聞き、初めて読む。短編小説が得意なようで、本作には表題作「スナック墓場」含め7編の作品が収められていますが、いくつかの作品は何らかの賞を受けたかノミネートされたもの。7編とも大きな事件事故があるわけではありませんが…

原田ひ香「ランチ酒」

原田ひ香さんの作品三作目は、「孤独のグルメ」の女性版で、深夜に変わった仕事をしている犬森祥子さんが、翌日のランチのお店でお酒を飲みながら、そのお店の雰囲気や料理の内容などを書き綴るのですが、「孤独のグルメ」と違うところは、その深夜のお仕事…

馳星周「帰らずの海」

馳星周の警察小説「帰らずの海」読了。警察小説はサスペンス小説の定番で、横山秀夫先生の作品は典型ですが、謎解きではなく、あくまで警察官を主人公に、人間模様を織り交ぜながら描く範疇の作品。 北海道警の刑事、田原稔が主人公で、彼は函館生まれながら…

馳星周「美ら海、血の海」

馳星周氏は、「不夜城」など、いわゆる闇社会の物語が多いと思っていましたが、直木賞受賞作の「少年と犬」などのヒューマンもあり、多彩な分野の作品を積み重ねています。本作「美ら海、血の海」は、沖縄戦を言う戦争を描いた作品で、これもまた読ませる良…

原田ひ香「東京ロンダリング」

原田マハさんの作品は何冊か読んでいましたが、原田ひ香さんの作品は初めて。なかなか面白かったことを冒頭に記しますが、本作「東京ロンダリング」の意味は何だろうと思っていましたが、マネーロンダリングが汚れたお金をきれいにするのに対して、東京の不…

歌野晶午「D坂の殺人事件、まことに恐ろしきは」

歌野晶午作品は「葉桜の季節に君を想うということ」以来となり、暫くご無沙汰しました。 本作「D坂の殺人事件、まことに恐ろしきは」は、表題作を含む7編の短編が収められ、いずれも江戸川乱歩の有名な小説をベースにしたパクリ的な一面を見せるものの、歌野…

2024年1月東北旅行記

恒例の冬の大人の休日倶楽部パスを利用した東北・伊豆旅行を計画しましたが、今回は思わぬ事態に遭遇。残念ながら伊豆旅行は露と消え、3泊目も東北となりました。 1月21日(日)8:48分東京発のやまびこ号で新花巻乗換、一路釜石の宝来館さんへ。今冬一番の寒…