辻村深月「家族シアター」

いま最も乗っている女流作家のひとり、辻村深月さんの「家族シアター」読了。お恥ずかしながら、直木賞作家でありながら読むのは「つなぐ」以来2冊目。「かがみの古城」を図書館に予約中ですが、なかなか回ってこない状態。
今回は短編集の「家族シアター」から辻村深月ワールドを味わうことに。結果的には、どの短編も心惹かれるものがありました。
「妹という祝福」は、性格も見た目も正反対な姉妹。妹はどちらかというと陰気な姉のことが好きになれない。でも、姉はその妹を自慢に思っていたことがわかる事件があり、妹は姉に感謝し、尊敬する。
サイリウム」は、オタク系で少女グループの追っかけをする弟と、気が強くロックグループを追っかけている姉の話。姉はいつも弟を馬鹿にするような態度で仲が悪い。そんな元気な姉がいつの間にかげっそりやせ細って元気がなくなる。その原因は・・・。でもやっぱり姉は弟のことを思ってくれていました。
「私のディアマンテ」は、かつてキャバクラにも努めていて、できちゃった婚した母と、学業成績優秀な娘の話。母親は自分が成績もよくなかったことから、娘の成績にもそんなに興味がなく、そんな母親を軽蔑交じりに見る娘。本当に親子?と思われるほど、まるで継母のような存在。そんな優秀な娘が、妊娠してしまう。そのとき初めて母親としての矜持を示し、そこから真の親子関係が生まれる。
「タイムカプセルの八年」は、子供の教育にそれほど興味を持っていなかった父親が、息子の小学校での父母会などで会計を担うなどの役割を担う。そんな中、息子の担任の先生の情熱に触れる。その先生は小学校卒業記念としてタイムカプセルを児童に書かせ、埋めることに。ところが、その先生を見習って自分も小学校の先生となろうとした息子の夢を破るようなタイムカプセルにまつわる話が耳に入る。親ばかと笑うな彼の話。
「1992年の秋空」は、私が最も好きな作品。年子の姉妹の小学校の生徒時代の話。姉は活発、妹は科学が好きで将来は宇宙飛行士になりたいと思っているような子で、姉妹はあまり仲良くない。そんな学校生活の中で、妹が姉のために楽器を貸したことから姉妹が仲良くなり、鉄棒の苦手な妹に教えることに。でもある約束を破った姉のために、妹がけがをしてしまう。これをきっかけに姉と妹はより一層仲良くなる話。
「孫と誕生会」は、小学生の孫とおじいさんの話。孫はアメリカ帰りでおじいさんになつかない。おじいさんは孫がご飯も食べないことを心配していろいろアプローチするものの、反応がない。おじいさんが学校で竹とんぼを作る講師になったことをきっかけに、二人はだんだん近づいていく。
「タマシイム・マシン」は、藤子不二雄さんの漫画を切っ掛けに結婚した若い夫婦の里帰り。そこには温かい家庭の姿がありました。
今日はこの辺で。