薬丸岳「刑事の怒り」

薬丸岳の夏目刑事シリーズ作品「刑事の怒り」読了。夏目シリーズを読むのは「刑事のまなざし」に次いで2作目。夏目刑事は、犯罪で意識不明の重体になった娘さんを、奥さんと二人で必死に育てている優しい人で、かつ犯罪に対する鋭い嗅覚を持つ名刑事。「刑事のまなざし」と同じく、夏目刑事が活躍する連作短編が4作品収録。
「黄昏」は、2017年度の日本推理作家協会賞短編部門の受賞作。40台の娘が母親の死体をトランクに2年間詰めていたとして自首してくる。年金目当てに隠していたという警察の見立てだったが、実はこの親娘には悲しい秘密があった。
「生贄」は、過去にレイプという性犯罪の被害者という心の傷を持つ女性の悲しい犯罪劇。性犯罪によって人生のすべてを失うような傷を持ってしまう悲しい物語であり、犯人への激しい怒りが漂います。
「異邦人」は、借金をして外国人留学生として日本に胸躍らせてきた女性が、実際の日本での生活に疲れ果てる姿を描きます。日本人よりも心が優しい彼ら彼女らをもっと大切にしなければ日本に未来はないことを痛感。
表題作の「刑事の怒り」は、交通事故で意識不明となった青年が病室で人工呼吸器を外され死亡する事件が発生。犯人として挙がったのは青年の親友だったのだが、親友は自殺ほう助を主張するのだが。自分の娘も同じような寝たきり状態の夏目刑事の怒りが爆発。
4篇とも、いまの日本社会の抱える問題を犯罪の裏に隠し持っている作品で、単なるミステリーとしての価値よりも、社会小説問い言ったほうが適切に感じる作品集でした。
今日はこの辺で。