2022-01-01から1年間の記事一覧

染井為人「震える天秤」

染井作品の三作目「震える天秤」読了。 フリーライターの俊藤律が、雑誌社から高齢者の交通事故についての記事の依頼を受け、福井県で起きた高齢者によるコンビニの店舗激突で店長が死亡した事故を取材することに。律は150ccのバイクを駆って東京から福井…

染井為人「悪い夏」

染井為人作品三作目は、生活保護問題をベースに、それにかかわる人間の「悪」を赤裸々に描く「悪い夏」読了。 生活保護をテーマとした小説としては、中山七里の最高傑作ともいわれる「護られなかった人たちへ」があり、読んで感動したものですが、本作は登場…

2022.12.18~19日修善寺温泉旅行記

12月18日~19日、一泊の修善寺温泉旅行に行ってきた。45年ほど前に、大学のゼミで行ったことがあるのですが、その当時の記憶は全くと言っていいほどなく、唯一、しし鍋をつついたことだけはおぼろげに記憶があります。そんな修善寺温泉に、全国旅行支援を利…

喜多川泰「心晴日和」

喜多川泰作品二作目は「心晴日和」。190ページで、かつ各ページの字数が少ないので、大変読みやすく、印象にも残る作品。一部・二部構成で、主人公の那須美輝さんの14歳と28歳での物語。 一部「美輝14歳」では、クラスの数人の女子生徒から言葉のいじめにあ…

染井為人「正体」

染井為人氏の作品は初めて。1983年生まれと言いますから、現在39歳の新進気鋭の作家。まだ著書の数も少ないですが、本作「正体」を読む限り、これからが楽しみな作家でしょう。本作に出会えて、私も幸せな3日間を過ごしました。 主人公の鏑木慶一は、若い夫…

喜多川泰「また、必ず会おうと誰もが言った」

amazonで喜多川泰の本を検索すると、どの作品も評価が4点以上、驚くのはレビューの数が半端ではなく、「運転手」に至っては6,000件以上が寄せられています。こうした人気作家を、私はまだまだ知らないことにガックリした次第。 早速図書館に行きました…

道尾秀介「シャドウ」

今年8月に道尾秀介が、どの章から読んでも話が通じて味わいがあるの連作短編「N」を読み、道尾氏の技の巧みさに出会いました。そんな道尾氏が2006年の作品「シャドウ」読了。シャドウとは日本語的には「影」と訳されますが、本作における影は、小学5年生が…

映画「あのこと」

新宿ピカデリーにてフランス映画「あのこと」鑑賞。「あのこと」という奇抜なタイトルを見ると、何のことやら?と思いますが、内容は極めてシリアス。人間ドラマではあるのですが、シリアス度は、一級のサスペンス映画と言ってもいい緊迫感がある作品。 アメ…

双葉文庫版「警察の灯」

4名の推理小説作家の警察関連小説を集めた短編集「刑事の灯」読了。 実は私は、4名の作家をどなたも知らなかったのですが、たまたま何かの情報で藤崎翔氏の名前を見たことから、選んだ文庫本。4作いずれも警察官を主人公にした作品で、個性的な刑事が登場す…

彩瀬まる「新しい星」

彩瀬まるさんの小説は初めてで、本作「新しい星」は直木賞の候補作になったということで、読んでみようと借りたのですが、こうしたいい作品を書いている女性作家がいることを知ったのは、一つの収穫でした。 本作は2019年9月号の別冊文芸春秋から連載された…

雫井脩介「引き抜き屋」

雫井脩介氏の作品は久しぶりだが、「火の粉」や「犯人に告ぐ」などの推理小説が中心と思っていましたが、本作「引き抜き屋 鹿子小穂の冒険」のような、ビジネス小説があるとは知りませんでした。確かにサスペンス的な要素が無きにしもあらずですが、軽妙な作…

11月の東北旅行記

11月25日(金)~28日(月)、3泊4日の東北旅行敢行。今回の旅行は、未だかってないほど天候に恵まれ、11月末でありながらセーターやコートがいらないような陽気に恵まれました。いつも雨男を自称している私としては極めて珍しいこと。 さて、初日はちょっと早…

原田マハ「夏を喪くす」

11月25日から28日まで、三泊四日の東北旅行に行ったのですが、その間最低一冊は本を読もうと図書館で見つけたのが本作。いざ選ぶとなるとハードカバーの単行本は重いため、どうしても文庫本となり、味のある著作で、駄作の少ない原田マハさんの短編集「夏を…

伊岡瞬「奔流の海」

伊岡瞬氏の作品は3カ月ぶりとなるが、やはり読みやすさは抜群。本作「奔流の海」もまた読みやすく、2日間で読了。 本作の目次を見て「何だこれは?」と思った次第。序章、第一部、第二部、終章はいいとして、一部、二部の項目が清田千遥と津村裕二(途中から…

小泉悠「現代ロシアの軍事戦略」

小泉悠氏は、ロシアのウクライナ軍事侵攻以降、テレビの報道番組で頻繁に見るようになったが、それまでは全く名前を聞いたことのない学者。現在は東大先端科学技術研究センターの特任教授として、主に軍事・安全保障の研究をしていますが、本人によれば、子…

柚月裕子「月下のサクラ」

「朽ちないサクラ」に続く、米崎県警の森口泉を主人公とした推理小説「月下のサクラ」読了。前作では、米崎県警の刑事ではなく、広報課員だった泉だが、前回事件で親友が殺されたことを契機に、今回は刑事になる試験の合格し、駐在所勤務を経て捜査支援分析…

白石一文「道」

白石一文氏が「ほかならぬ人へ」で直木賞を受賞したのは11年前。もうそんなに経つのかと、感慨深い思いですが、一時期は集中的に白石作品を読んだ覚えがあります。このブログで確認してみると、最後に読んだのが2018年12月で、作品は「ここは私たちのいない…

亀井静香「永田町動物園 日本をダメにした101人」

自民党の国会議員だったが、小泉の郵政解散で離党し、その後政党を作ったり渡り歩いたりした政治家、亀井静香氏が、付き合いのあった政治家101人の人物評を週刊現代に連載したものを単行本化したエッセイ「永田町動物園 日本をダメにした101人」読了。 タイ…

亀の冬眠

7月から、妻の親族の海外転勤があり、その親族からペットの亀を預かってほしいとの依頼があり、面倒くさいと思いながらも、断り切れず預かることになりました。 我が家では、猫を何匹も飼った経験はあるのですが、爬虫類は初めて。そのグロテスクな姿かたち…

薬丸岳「神の子」

薬丸岳「神の子」 薬丸岳の上下巻、都合950ページにも及ぶ長編エンタメスリラー「神の子」読了。小説宝石に2008年1月から2014年5月にかけて連載された長編作品で、単行本にあたり大幅修正を加えた作品。これだけ長期にわたって連載される作品も少ないが、特…

薬丸岳「逃走」

薬丸岳が、「家族」関係を主題にした作品「逃走」をスピード読了。 埼玉でラーメン店を営んでいる秋山という男が何者かに殺害される事件が発生。秋山は人柄がよく、正義感もあることから周囲から信頼されていた人間。特に駅のホームから転落した子供を助ける…

薬丸岳「告解」

薬丸岳の2020年の比較的新しい作品「告解」を2日間で読了。大学生が飲酒運転の末ひき逃げ事故を起こし、懲役刑判決。大学生の親は離婚、姉は婚約が破談になるという、運転免許更新時の講習で見せられるビデオのような典型的な加害者家族の崩壊を描く一方、被…

薬丸岳「誓約」

薬丸岳の2015年の作品で、殺人を誓約させられた男の苦悩と、犯人探しを描く「誓約」読了。 向井聡は、川越で落合という男と共同でバーを営むバーテンダー。落合から熱心に誘われて16年前に共同経営という形で店を開き、今はバイトで男女二人を雇って、そこそ…

浅田次郎「兵諫」

浅田次郎の小説の範囲は極めて広く、現代物、歴史物、やくざ物、戦争物等々、どれも非常にレベルの高い作品であるが、その中で異色なのが中国の歴史物があげられる。本作「兵諫」は、その中国歴史物で、浅田氏が特にこだわってシリーズを重ねている清朝~日…

薬丸岳「ラストナイト」

薬丸岳作品の集中的読書中ですが、昨日読み終わった「死命」については、中の下の評価で、どちらかというと面白くないと書いたのですが、本日一日で読了した「ラストナイト」は見事な作品。その面白さと感動的な展開から、一刻も早くラストナイトがどんな展…

薬丸岳「死命」

「ブレイクニュース」に続いての薬丸岳作品、「死命」読了。 登場人物は、子供時代に何らかのトラウマを抱え、その影響で連続殺人を実行する33歳の榊信一と彼の幼馴染で、お互いに愛しながら結婚しなかった山口澄乃、榊が犯した殺人事件を追いかける執念の刑…

薬丸岳「ブレイクニュース」

「天使のナイフ」で江戸川乱歩賞を受賞し、鮮烈に文壇デビューした薬丸岳氏も、既に中堅からベテランの域に達する作家となりました。中山千里氏のような多作ではありませんが、良作を数多く書いている推理作家。そんな薬丸氏の作品「ブレイクニュース」を読…

米澤穂信「さよなら妖精」

米澤さんの原点とも言える高校生を主人公とした作品「さよなら妖精」ですが、本作にはのちの米澤作品のヒロインとなる太刀洗万智も高校生として登場する、ちょっと感傷的な作品。 本作で登場する高校3年生は、主役となる守屋路行、女生徒の太刀洗、白川いず…

映画「モガディシュ」「オフィサー・アンド・スパイ」

10月に入って急に寒くなり、昨日・今日は既に真冬並みに感じられる寒さ。やはり秋はちゃんとやって来てほしいものです。 本日はギンレイホールにて映画二題鑑賞。ギンレイホールもビル建て替えのため、現在移転先のホールを物色中とのことで、今の場所では11…

米澤穂信「ボトルネック」

米澤氏の2006年の書下ろし作品「ボトルネック」読了。コロナ感染したため、体調がすぐれず、読書にも身が入らず、久しぶりの読了作品。 米澤氏の原点が中学生や高校生を主人公とした作品群(古典部シリーズなど)ですが、本作も中高校生シリーズ。 嵯峨野リ…