喜多川泰「また、必ず会おうと誰もが言った」

amazonで喜多川泰の本を検索すると、どの作品も評価が4点以上、驚くのはレビューの数が半端ではなく、「運転手」に至っては6,000件以上が寄せられています。こうした人気作家を、私はまだまだ知らないことにガックリした次第。

早速図書館に行きましたが、残っていたのは「また、必ず会おうと誰もが言った」一冊のみ。早速借りてきて数時間で読了しましたが、なるほど、人気作家であることが理解出来ました。喜多川氏は、学習塾を開設、新しい塾の在り方を追求し続けているとの作家照会がありますが、若年者への温かい思いやりを持った教育を連想させます。

本署の主人公は熊本に住む高校2年生の秋月和也君。彼は両親と兄の4人暮らしで普通の高校生生活を送っているが、少しプライドが高いところがある少年。同級生との修学旅行の話の中で、知ったかぶりを装い、ディズニーランドに行ったことがあると、つい嘘をついてしまう。疑った生徒が証拠を見せろ、と言って挑発したため、嘘のカバーをするべく日帰りのディズニーランド訪問をせざるを得なくなり、これまた両親に嘘をついて、東京に出かける。園内で証拠の写真を撮ることはしたが、帰りの飛行機に乗りそこない途方に暮れる。そんな彼に声をかけてきたのが空港売店の田中さんという親切なおばさん。田中さんは彼を泊めてくれると言い、アパートに連れて帰り、先ずは第一の人との出会い。彼女は、折角のチャンスだから、青春切符で苦労して帰ったらと進め、彼はそれに従うことに。二人目の出会いは、田中さんの息子さんに会いに行った際に、これまた泊めてくれる美容院の店長の木原さん。木原さんは大学を中退して美容の世界に入ったこと、母親から信頼されていたから今の自分があること、だから店のモットーは「感謝」であることなど、和也君に人生訓を話す。田中のおばさんから預かった誕生祝の時計を、息子の雄太さんに渡し任務を無事に終わり、田中のおばさんに少しは恩返し。息子さんとは、互いに自分からは会いに行けないと言っていた親子は、その後頻繁に逢うことになったようでした。和也君は美容院で借りた自転車で厚木方面に向かう途中会ったのが太田さんというお巡りさん。太田さんもまた和也を心配してくれ泊めてくれることに。太田さんからは、人に喜ばれることをすることが一番幸せな時、そして勇気を出すために必要なのは愛情だよ、という人生訓を学ぶ。太田さんに送られて高速のパーキングエリアで載せてくれるトラックを見つける。そこで出会ったのが、トラックドライバーの柳下さん。怖そうな強面のおじさんだが、彼からは自分の信じることをやれという人生訓を学ぶ。

柳下さんとフェリーに乗り込み、そこで医師の和田さんに出会う。和田さんからは、母親から使命に従い行きなさいということを学んだことから、今の自分があることを語られる。

柳下さんが熱を出して、代わりにトラックの運転に来たのが娘さんの千里さん。千里さんからは、国際人になるためには英語力だけでなく、日本人としての教養であることを学ぶ。そして最後に会うのが戦争を経験した老人の三品さん。彼からは、自由に思いっきり生きることの重要性を学ぶ。

5日間の東京往復の旅で、これほどの善人たちに出会い、生きていくうえで大切なことを学んだ和也君。こんなすごくて、幸せな旅は、お金をいくら出しても買えない貴重なものになったのでした。

今日はこの辺で。