喜多川泰「心晴日和」

喜多川泰作品二作目は「心晴日和」。190ページで、かつ各ページの字数が少ないので、大変読みやすく、印象にも残る作品。一部・二部構成で、主人公の那須美輝さんの14歳と28歳での物語。

一部「美輝14歳」では、クラスの数人の女子生徒から言葉のいじめにあい、登校が苦しく、かなり思いつめた美輝さんが、たまたま行った病院の屋上で、井之尾さんという老人に出会い、彼から辛さの原因も、やはり自分に原因がある、つまり「自分に起こっていることの原因はすべて自分にある」と教わり、勇気をもって自分から行動することで悩みを解決していったらどうかと説かれる。美輝さんは、迷いながらも早速学校に行き、いじめている子たちも大好き、と心で唱え、更には新しい友達を作ろうと、一人で帰る子に声をかけ、友達も作る。まるで魔法の様に短時間に自分の心が晴れていくような時間を過ごすことになる。そして、いじめていた子の一人からは、「ごめんね、ありがとう」ということまで言われる。そして好きな男の子もできる。ただ、残念ながら父親の転勤でその土地を離れることに。でもそれも、心が沈んでいた時に、父親に自分がつぶやいていたのが原因であり、前向きに土地を離れることができた14歳。

第二部「美輝28歳」では、28歳になった美輝さんが大手建設会社でみんなから信頼されるキャリアウーマンとして登場。彼女は、更なる飛躍を期して、建築士の試験に挑むべく勉強し、それが自分のキャリアアップ、自分の生活アップにつながると信じている。試験の前日、後輩を慰めようと誘い、居酒屋で若干飲み過ぎたことから、翌日の試験会場へ向かう途中のバスの中で意識を失ってしまう。気が付くと病院のベットの上。そこには、彼女を病院に連れてきてくれた男性がおり、彼もまた試験を受ける筈だったことを知る。大変な迷惑をかけてしまったことを詫び、翌日再度お詫びするため彼が勤める材木店を訪問する。そこで、彼が自分だけの為ではなく、お客さんの為、同業者の為、大工さんの為など、自分以外の人達のために仕事をしていることを聞かされ、自分は己の為しか考えていなかったことを痛切に恥じ入る。彼女は、大手建設会社で、自分が認められたいため、会社の利益のためにのみ働いていたことを感じ、結果的に会社を辞め、彼が社長となった小さな材木店に再就職するところで終了。

正に人生訓を教えていただいた一冊でした。

今日はこの辺で。