#小説

小杉健治「宿命」

小杉健治「宿命 検事 沢木正夫」読了。小杉健治には時代小説作品がたくさんありますが、法廷ものなどのサスペンスもあります。 今回は検事 沢木正夫シリーズの「宿命」を読んでみました。 一人の若い女性が若い男を殺した容疑で逮捕され、簡単に自供して沢木…

白石一文「快挙」

直木賞作家、白石一文作品「快挙」読了。何となく既読感があり、もしかしたら前に読んでいる可能性があるのですが、当ブログには記載がなかったので、感想を書きます。 主人公の俊彦と妻みすみの出会いから中年に差し掛かるまでの紆余曲折を描き、大変読みや…

唯川恵「途方もなく霧は流れる」

唯川恵「途方もなく霧は流れる」読了。唯川作品では珍しい、中年男性を主人公にした作品。大手航空会社(これはすぐに日本航空と分かりまっすが)の経営が破たんしてリストラされた50歳の、しかも離婚して独り身の中年男性が、父親が作った軽井沢の別荘に…

柚月裕子「合理的にあり得ない」

私の好きな柚月裕子の作品「合理的にあり得ない」読了。 弁護士資格をとある事件の罠にはまりなくした上水流涼子を主人公とした短編シリーズもの。 確率的にあり得ない、合理的にあり得ない、戦術的にあり得ない、心情的にあり得ない、心理的にあり得ない、…

唯川恵「愛に似たもの」

ここのところ集中して読んでいる唯川恵作品。今回は短編集「愛に似たもの」読了。 表題の作品があるわけではなく、愛に似たようなもので、実は愛ではないものしか経験にない女性を主人公にした作品が8篇。 どちらかというと、家庭の愛にも恵まれず、一人で…

唯川恵「病む月」

唯川恵の短編「病む月」読了。金沢を舞台にした、すべて女性を主人公とした全10篇の短編ですが、金沢の街並みや四季、周辺の山々が目に浮かんでくるような小説、そして描かれる人間模様はどれも秀逸。 最初の「いやな女」でまず度肝を抜かれました。人間関…

村上春樹「女のいない男たち」

村上春樹作品は今まであまり興味がなく、地下鉄サリン事件の被害者を負ったドキュメンタリー作品「アンダーグラウンド」を読んだだけ。今回、妻が捨てようとした「女のいない男たち」を読んでみました。 表題作ほか全6篇の短編集ですが、意外と読みやすく、…

唯川恵「手のひらの砂漠」

唯川恵の「手のひらの砂漠」読了。 夫の暴力に1年以上耐え、殺されそうなまでの暴力を受けている一瞬のすきに身一つで逃げ出して、シェルターやステップハウスを経由して農園に避難。その後も夫に追いかけられ、周りの同じような境遇の女性たちに助けられな…

唯川恵「一瞬でいい」

久しぶりに唯川恵作品「一瞬でいい」読了。唯川作品は、相変わらず読みやすさが抜群で、かなりの長編ですが、短期間で読むことができました。ストーリーも単純で心地よく読めました。 軽井沢で出会った18歳の高校生が浅間山登山を行い、不幸にも一人が事故…

重松清「ロング・ロング・アゴー」

久しぶりに重松清の作品「ロング・ロング・アゴー」を読む。相変わらず、青少年ものを書かせたらこの人の右に出る人はいないと再認識。青少年を主人公にした短編六篇が収録された作品。 地方都市のデパート経営者の小学生のお嬢様と友達が主人公の「いいもの…

朝井まかて「御松茸騒動」

久しぶりに朝井まかて作品、「御松茸騒動」読了。朝井まかてというと、直木賞受賞作「恋歌」に強い印象が強かったため、その後何冊か読んでおり、どの作品も水準以上の作品を書く女流歴史小説作家が定着しています。ただ、今回読んだ「御松茸騒動」は、紀伊…

翔田寛「真犯人」

最近、読書量が減っており、焦っている次第。どの作品もとっつきが悪く、頭に入らないのが原因。余も安い本を選んでいるのですが、頭の老化が相当進んでいる模様。 翔田寛「真犯人」は読みやすく何とか読了できました。 昭和49年におきた5歳児の誘拐殺人事…

原田マハ「楽園のキャンパス」「モダン」

原田マハの美術系小説「楽園のキャンパス」と「モダン」読了。 「楽園のキャンパス」は、アンリ・ルソー作品を巡るアメリカ人キュレーターと日本人女性研究家が、スイスの収集家に呼ばれ、作品の真贋を判定する過程を描く。 美術にはまったく興味も関心もな…

原田マハ「奇跡の人」

原田マハが、アメリカのヘレンケラーとサリバン先生の物語を日本版にして描いた「奇跡の人」読了。 安先生と目、耳、口が不自由な子供れんとの壮絶な教育過程を描き、安先生の執念とれんの隠された才能が実を結んでいく様は感動的であり、最後は泣けてなけて…

中島京子「長いお別れ」

中島京子「長いお別れ」読了。英語に訳せばロング・グッド・バイ。高齢化社会ですでに大きな社会問題化しつつある認知症患者の急増と、家族の苦労を淡々と描きます。 昇平は80歳の認知症老人。既に10年前から認知症を患い、手のかかる存在。そんな夫の面倒を…

今野敏「疑心 隠蔽捜査3」

今野敏「疑心 隠蔽捜査3」読了。キャリア警察官でありながら、息子の事件で左遷され大森警察署の所長として活躍する竜崎を主人公とするシリーズの一つ。 今回はアメリカ大統領の来日警備を主題にして、竜崎が方面本部長を任命され、無事に事件を事前解決す…

薬丸岳「アノニマル・コール」

久々の薬丸岳作品「アノニマス・コール」読了。 アノニマス・コールとは匿名電話の意味。3年前に警察を辞め、妻とも離婚した朝倉は、派遣労働者として悲惨な暮らしをしている。そんなある日、別れた妻のところに匿名で娘を誘拐したとの電話があり、妻が朝倉…

桜木紫乃「それを愛とは呼ばず」

桜木紫乃作品「それを愛とは呼ばず」読了。東京でホテルマンとして長く働いていた50代の男がホテル火災で失業し故郷の新潟に帰る。そこで務めた会社の年上の女社長に気に入られ結婚。しかし、女社長は交通事故で帰らぬ人に。女社長の実子に追い出されるよう…

石田衣良「北斗」

久しぶりに石田衣良作品を読む。虐待と殺人という重いテーマを主題にした長編作「北斗」。 虐待されたことも、したこともないので、虐待の持つ恐ろしさ、連鎖性などはわかりませんが、とかく事件になるのは、自分も虐待されていた子供が大人になって、自分の…

東野圭吾「マスカレード・イブ」

東野圭吾の「マスカレード・ホテル」で出会う警視庁の刑事新田浩介とホテルの優秀なフロントウーマン山岸尚美が、出会う前の二人のエピソード4篇が収められた短編集。 「マスカレードホテル」では、二人が協力して難事件を解決するストーリーだったと思いま…

柚月裕子「ウツボカズラの甘い息」

柚月裕子「ウツボカズラの甘い息」読了。「検事の本懐」などの法廷ものを得意とする女流作家で、山形在住。今回山形、米沢への温泉旅行のおともにこの作品を持参して読み終えました。 450ページも長編ですが、これだけ長くする必要があるのか?柚月作品と…

東野圭吾「歪笑小説」

久しぶりに東野圭吾作品「歪笑小説」を読む。電車で読んでいて、ついつい笑ってしまう作品。本当に話がうまい作家です。 12編の短編から構成される作品ですが、登場人物は出版社の編集者と作家たち。名物編集長の作家への気遣い、自分では大作家と思ってい…

三浦しおん「光」

三浦しおん作品「光」読了。 美浜島という架空の島に津波が襲い、生き残ったのは5人だけ。その5人の20年後の物語が描かれます。北海道南西沖地震で奥尻島があっという間に津波にのまれたのを想定したのでしょうが、ちょっと極端すぎるプロローグ。その津…

奥田英朗「ナオミとカナコ」

久々の奥田英朗作品「ナオミとカナコ」を2日間でスピード読了。恥ずかしながら、読む速さは遅く、女房子供にバカにされるのですが、そんな中、2日間で読み上げるのは異例の速さ。その面白さに引き込まれ、夜遅くまで読むことに。 奥田作品のいいところは、…

松岡圭祐「カウンセラー完全版」

「探偵の探偵」がドラマ化され注目されている松岡圭祐作品「カウンセラー完全版」読了。 小学校の音楽教師がピアノによって不登校児を登校させるような教育をしたといことで文科省から表彰されるところから話が始まります。その女教師が主人公なのかと思いき…

真保裕一「トライアル」

真保裕一「トライアル」読了。競輪、競艇、オートレース、競馬をテーマに4つの短編が収録された作品。競輪、競艇、オートレースが、それぞれ人間がまたがる機械的な要素のある乗り物であることから、それを掘り下げている点が興味深い作品。私は、てっきり与…

柚木裕子「パレートの誤算」

検事もので面白い作品を書いてきた柚木裕子が、生活保護の実態に迫った作品。「検事の死命」のようなサスペンスは期待できないものの、柚木作品にみられる弱者の立場に立った視点がうかがえる作品。 いわゆる貧困ビジネスが話題になる昨今、その疑いのある事…

桜木紫乃「ブルース」

桜木紫乃「ブルース」読了。例によって、北海道の道東を舞台にした味のある話。 貧民屈のようなところで育った男が、やがては街を牛耳る存在にまでなる過程を、付き合った女の立場あら描いた連作。6本の指を持った青年が、その容貌と度胸、セックステクニッ…

東野圭吾「回廊亭殺人事件」

東野圭吾が25年以上前に書いた「回廊亭殺人事件」読了。東野作品としては中の下あたりの作品か。 莫大な遺産を残して死んだ一ケ原高顕の秘書を務めていた女性が、自分の恋人を殺された復讐を果たす話。 回廊亭という廊下の長い独特な旅館を舞台にして、高顕…

司馬遼太郎「関ヶ原」

司馬遼太郎の代表作、「関ヶ原」上・中・下巻読了。 今まで司馬遼太郎作品は、なんとなく敬遠していたのですが、会社の後輩に読書づきがいて、今回挑戦しました。 関ヶ原が天下分け目の決戦になり、その後260年間の江戸幕府時代が続くことは誰でも知っていま…