桜木紫乃「それを愛とは呼ばず」

桜木紫乃作品「それを愛とは呼ばず」読了。東京でホテルマンとして長く働いていた50代の男がホテル火災で失業し故郷の新潟に帰る。そこで務めた会社の年上の女社長に気に入られ結婚。しかし、女社長は交通事故で帰らぬ人に。女社長の実子に追い出されるように会社を辞め、不動産会社に入社し北海道のしなびた別荘の販売に出向く。
一方の主人公はアイドルそして女優を目指して釧路から上京し、結局目が出ずにキャバレーで働く30歳まじかの女性。美しい容姿ながら、それ以上の特徴がなく女優をあきらめ、ホステスに専念しようとするが、キャバレーの衣装係の年配女性の介護する母親との無理心中事件を機に北海道に帰ることに。その途中で、かつてキャバレーであった男性に会いたくて別荘に赴くのだが・・・・。桜木さん独特の霧のかかったような風景、寂しさと隣り合わせの人間生活の描写はここでも健在。話は、二人の男女の生活が交互に描かれ、いずれも救いが少ない哀しい欝々とした雰囲気が漂う桜木さん独特の風味をここでも味わえました。
今日はこの辺で。