白石一文「快挙」

直木賞作家、白石一文作品「快挙」読了。何となく既読感があり、もしかしたら前に読んでいる可能性があるのですが、当ブログには記載がなかったので、感想を書きます。
主人公の俊彦と妻みすみの出会いから中年に差し掛かるまでの紆余曲折を描き、大変読みやすい作品。
俊彦は学生時代に写真の賞をもらったことから、プロの写真家を目指してアルバイトをしながら写真を撮り続けていますが、才能に限界を感じている。そんな時、下町を散策して写真を撮っている時に、みすみという女性に出会います。やがて二人は結婚し、みすみは必死に俊彦の夢を支援する姿に好感が持てます。しかし。俊彦は写真よりも小説家の方が向いているとの思いを強くし、今度はしょうせつかをめざす。みすみはこの時も必死に働いて支援するのですが、みすみの実家が神戸にあり、ちょうど震災が来て夫婦で神戸に行くことに。そして神戸ではラジオのシナリオライターの仕事を得て、何とか暮らすのですが、二人の間に隙間風が・・・・。二度の流産やお互いの心が離れた時の浮気などもありますが、二人は再び東京に戻り、再出発して、最後はハッピーエンド。
淡々とした話ですが、白石作品は読みやすく、小さな感動も与えてくれます。とくに、みすみの人間性には魅力的なにおいがあり、俊彦は幸せ者だとつくづく思った次第。
今日はこの辺で。