司馬遼太郎「関ヶ原」

司馬遼太郎の代表作、「関ヶ原」上・中・下巻読了。
今まで司馬遼太郎作品は、なんとなく敬遠していたのですが、会社の後輩に読書づきがいて、今回挑戦しました。
関ヶ原が天下分け目の決戦になり、その後260年間の江戸幕府時代が続くことは誰でも知っていますが、その関ヶ原の戦いが、どういう経過で起きたのかについては、詳細まで歴史で教わらないので知らない人のほうが多いのではないでしょうか。もちろん、群雄割拠の戦国史と秀吉の天下統一など、何百年も前のことなので、史実がどうなのかはわかりませんが、大まかなところは司馬遼太郎の描いたこの本の通りなのでしょう。
秀吉の死によって、徳川家康が最大の実力者になり、各大名を懐柔するため姻戚や増俸禄などを巧みに行い、秀吉政治の継続を自認する石田光成と衝突していく過程が描かれます。
読んでいて権力というものがどうやって大きくなっていくのかが鮮明になります。これは決して封建時代のことに限ったことではなく、現代にも通じることです。選挙という極めて合法的な手段によって政権を握った与党の親玉が、いずれ独裁者になって法律を捻じ曲げていずれ戦争に向かう構図は、ナチスドイツや現在の安倍政権に通じるものがあります。権力者に対して何も言えなくなる空気が蔓延してくる情景があります。
家康は巧みな戦略によって戦う前からその勝利を勝ち取っていたという構図を作り上げました。我が身かわいい大名たちは、長いものには巻かれろ、的発想で家康に付き従うのです。
天下分け目の決戦は、こうした事前工作によって、実質的には一日で決着し、徳川の時代となりました。
司馬遼太郎の描く家康像、光成像、福島正則島左近など、個性的な人間像を楽しみながら、権力者とはどうあるべきかを教えてくれる小説でありました。
今日はこの辺で。