唯川恵「途方もなく霧は流れる」読了。唯川作品では珍しい、中年男性を主人公にした作品。大手航空会社(これはすぐに日本航空と分かりまっすが)の経営が破たんしてリストラされた50歳の、しかも離婚して独り身の中年男性が、父親が作った軽井沢の別荘に一人で引っ越してきて、そこで4人の女性と一匹の犬と出会い、彼女たちとの交流の中で自分の生き方を探る???1年間を描きます。
まずうらやましいのは、家のローンもなく、妻への慰謝料負担もなく、住む家もあり、かつ65歳までは何とか生活していける預貯金があるので、切迫した経済的な不安がないこと、そして男としてイケメンなのか、女性にもてること。小料理屋の若い女将、かつて会社員時代にいじめられた官僚の魅力的な奥さん、そして女獣医師。彼女たちから好意を持たれるのだから、幸せな男である。
失業保険の受給期間が切れても、仕事を探さなくてもいい身分に対しては、読者としても異世界の人という印象ですが、そんな男が気休めに仕事を探している姿を見たら、真剣に仕事を探している人から見れば、作中にあるような文句の一つも言いたくなるのは当たり前かも。
従って、この主人公の男に共感する人は少ないでしょうが、女性の描き方はさすがにうまく、皆魅力的に描くところが唯川恵の真骨頂か。
今日はこの辺で。