久しぶりに石田衣良作品を読む。虐待と殺人という重いテーマを主題にした長編作「北斗」。
虐待されたことも、したこともないので、虐待の持つ恐ろしさ、連鎖性などはわかりませんが、とかく事件になるのは、自分も虐待されていた子供が大人になって、自分の子供を虐待している事例。
主人公の北斗は、幼少時から父母にすさまじい虐待をされ、それをひたすら隠して生きてきた少年。父親の死によってその虐待から解放されたと思ったら、同じくその父親に虐待されていた母親が、いわば虐待依存症となり、今度は息子に虐待を迫る事態に。そんな苦境から逃げ出すべく児童相談所に逃げ込んだ主人公が初めて、里親のもとで人間の愛に触れる。それは今までに経験したことのない人間らしい愛情の世界。しかしその里親であるお母さんが、詐欺事件のさなかに亡くなって、主人公の青年が殺人事件で裁かれる。前半は両親からの虐待、中盤が里親との愛情ある生活、後半が殺人によって裁かれる裁判場面。
虐待やいじめが小説の絶好のテーマになっている中で、この小説もその重いテーマを語っています。
確かに詐欺事件の犯人そのものを殺しているだけでは、後半の裁判の場面は薄くなってしまうのでしょうが、罪のない二人を殺してしまうストーリーは、果たしてありなのか?これだけ何となく私には引っかかりました。
今日はこの辺で。