伊岡瞬「朽ちゆく庭」

都内の賃貸マンションから郊外の戸建住宅、それも敷地が50坪、2代のカーポートと庭付きの家に引っ越してきた山岸一家に起きた事件を主軸として、崩壊すれすれにある家族関係を描く「朽ちゆく庭」読了。

一家はゼネコンの現場監督で忙しくて家族との時間が少ない夫、税理士事務所に勤める妻、中学2年生の長男の3人暮らし。夫は下請けの営業ウーマンとの不倫の精算、妻は事務所の所長とのW不倫、長男は不登校という問題を抱える家族。話は主に妻の裕美子の不倫と長男真佐也が語る形で進み、後半には夫洋一もそれに加わる形で展開。

事件は、長男が近くの公園で寂しそうにしている少女を善意で家に呼んであげて、温かいものを飲ませるなどしたことをきっかけに、翌日もその少女が公園にいたので同じように家に入れてあげるが、そこに仲が良くてしょっちゅう遊びに来る友達が来て、3人の子供の関係が微妙になったことから事件が発生。真佐也が外出中に少女が家の中で殺され、真佐也があっさり自供したことから、3人の家族のそれぞれの葛藤が始まる。夫は工期に追われる環境で下請けの不法就労外国人を黙認し、下請けから金銭をバックを受けていたことで自宅謹慎になり、妻は同僚女性の脅迫まがいの行為に悩み、息子は両親への憤りから自爆的な自白に走るなど。

結局、真犯人は真佐也の友だちが自白し、更にはその友達を誘い込もうとした不良仲間たちになるが、真佐也が自白した真相が、最後の最後に明かされる。そこには友達との絆が見え、本作で唯一救われる部分でもある。「朽ちゆく庭」とは、庭を家庭、家族に見立てて、それが壊れていく、朽ちていく姿を描き出した作品なのでした。

今日はこの辺で。