一穂ミチ「パラソルでパラシュート」

一穂ミチさんの作品は初めてですが、彼女自身は2022・2023年の本屋大賞にノミネートされ、惜しくも逃している人気作家。これから大いに期待されますが、今回はとりあえず図書館にあった「パラソルでパラシュート」。

東京生まれながら現在は両親と大阪に暮らす柳生美雨さんが主人公。彼女はたまたま行ったライブのコント劇場で、矢沢亨さんと出会う。初めて吐く靴で靴擦れができ痛がっているところを亨に出会い、手当てしてやるからと言われ、彼が住むシェアハウスについていってしまう。何故か亨が安心できる男に思えたからの行動。そのシェアハウスの住人は漫才やコントを生業とする4人。美雨さんはその後このシェアハウスに人達と話が合い、ここと良さを感じて入りびたるようになり、最後は一人が抜けた穴を埋める形で住むようになる。美雨は亨と彼の相方を勤める弓彦、シェアハウスの住人である郁子さんとマコさんなどと交流していく姿を描く。美雨さんは会社の受付嬢で契約社員。現在29歳の美雨さんは30歳になったら会社を辞めることが決まっており、資格も特技もない彼女には将来的な不安が付きまとうが、そんな彼女と同じようにコント・漫才をやっているシェアハウスの人達もメジャーになることが難しい業界の中で、将来的な不安を抱えており、何か共鳴すべきところがある。前記した人たちとの会話が中心になる作品の中で、ハイライトは亨の継母が彼を尋ねてくる場面。亨は北海道生まれで、母親がなくなり葉月さんという従姉が父親と再婚。亨は葉月さんを恋してしまい、一緒に故郷を捨てようと言ったが拒否された仲。その葉月さんが突然大阪に来て、父親が亡くなったこと、遺産放棄の判を押してくれと楽屋で迫る。でも葉月さんは決して悪い人ではないことを亨は知っていた。

美雨さんは1年後、予定通り受付嬢はやめるが、これからどうするのか?亨さんと結婚するのか?それは誰もわからない。

今日はこの辺で。