2024年映画鑑賞のふり返り(1)

ギンレイホールからは、相変わらず会館のお知らせがなく、場所探しに苦労しているのかどうか?そんなわけで最近は地元下高井戸の下高井戸シネマが専門となりつつあります。

2024年第一四半期のふり返りは以下の通り。

「あしたの少女」:韓国映画は今世界中で注目度抜群ですが、その題材もバラエティーに富んでいます。日本以上の競争社会と言われ、一流大学や一流企業への入学・就職は大変で、映画の題材にもなりますが、本作は高校生の就職の話。学校の推薦でコールセンターの実習生となった高校3年生が、実習生にもかかわらず責任を負わされ、自殺するという、実話に基づいた映画。観ていて腹が立つほどの理不尽な企業や上司の対応で、ハラスメントもあったもんじゃない話ですが、映画としてはよかった。

「ヨーロッパ新世紀」:珍しいルーマニア映画フランケンシュタインで有名な東欧の片田舎の小さな村の工場で、アジアからの外国人労働者が雇用されたことから、村人の雇用が奪われるという不安心理も手伝って不穏な空気が流れだすという、正に不穏な雰囲気の作品。東欧の作品は、何故かこうした暗い話の作品が多いのはなぜでしょうか。一見の価値ありの作品でした。

「カムイのうた」:アイヌの言語を文字化したのは有名な金田一京助先生ですが、それを手伝ったアイヌ出身の女性の物語。彼女は、アイヌ女性の先駆的人材で、学業優秀なことから師範学校を受けるが、人種問題で入学できず、女子職業学校に入学。そこでも大きな差別を受けるが、金田一先生が現れたことから、その仕事を手伝うため東京に出て見事な業績を残すが、残念ながら病気で早逝。こんな優秀なアイヌの女性がいたことに感動。

「市子」:最近その演技力が注目され売れっ子となってる杉咲花さんが主演を務め、過酷な境遇に翻弄された市子という女性。恋人ができてプロポーズされるが、翌日に姿を消す。恋人は市子の消息を探すが、次第に彼女の境遇が明らかになってくるという筋書き。犯罪映画では戸籍の売買などがよく出てくるが、市子はかつては別の名前で生きていたことがわかる。この映画も一見の価値ありでした。

「正欲」:朝井リョウのベストセラー小説の映画化。LGBT関連映画は世界中で氾濫しているが、本作はQに属する人たちを対象にした作品。検事役の稲垣吾郎は主演というよりも、助演的な役回りで、主演はQの正欲を持つ新垣結衣と言った方が適切ではないか。彼女は水に異常な欲望を持つ。同じ水に欲望を感じる人間が登場し、自分と同じものを持つ仲間として分かり合えるが、その他大勢の人間には理解できない。これが大きな悩みになってしまうという話で、予備知識なく鑑賞した私もびっくりした次第。世の中にはこうした悩みを抱える人もいるのだと理解しなければならないことを教えてもらいました。

「ティル」:1950年代、シカゴで育った息子が南部ミシシッピーの親せきの家に遊びに行くことになり、白人には気を付けろと注意する母親。そんな息子が、母親の言葉も何のその、ある商店で女性の店員に声をかけてしまう。その女性は店のオーナーの娘で、早速娘の親が声をかけた息子を引っ張り出していく。その後死体が発見され、裁判となるが陪審員は全員が白人で有罪になるはずがない。これは「アラバマ物語」と全く同じ。母親はその後黒人解放運動に大きな役割を残すことになる。今でもあまり変わっていないアメリカの暗部でありました。

「カラオケに行こ」:綾野剛が気のいいやくざに扮し、組組織のカラオケ大会があるので、指導をしてほしいと、高校の合唱部の男子生徒を強引にカラオケボックスに誘う。少年はいやいやながらだったが、次第にこのやくざが好きになっていく姿を、喜劇調に描くドラマ。何度も会場から笑い声が聞こえる、珍しく楽しい映画でした。

「パリ・タクシー」:90代の女性がパリでタクシーに乗り、女性がドライバーに行くところを指示。それは彼女の人生の思い出の場所。ドライバーは全てがうまくいかない人生の危機に陥っていたが、やがて老人女性徒意気投合し、最後には意外なハッピーな結末が待っている。心温まるいい作品でありました。

ゴジラ-1.0」:アジアで初めてアカデミー賞の視覚効果賞を獲得した作品。終戦直後の東京はまだバラック小屋が残る状態。特攻の生き残りが自宅に帰るが誰もいない。ある女性と出会い同居する。そんな冒頭から始まり、水爆実験で出現したゴジラが東京を襲う。特攻生き残りの男は、ゴジラの弱点を見極め、最後の特効に挑むのだった。ゴジラの迫力は大いに見ものですが、ストーリーはまあこんなものか、でした。

今日はこの辺で。