原田ひ香「東京ロンダリング」

原田マハさんの作品は何冊か読んでいましたが、原田ひ香さんの作品は初めて。なかなか面白かったことを冒頭に記しますが、本作「東京ロンダリング」の意味は何だろうと思っていましたが、マネーロンダリングが汚れたお金をきれいにするのに対して、東京の不動産をきれいにすること。いわゆる事故物件の部屋の価値は、相場よりもかなり低くなることは知られていますが、事故後に人が住んだ経歴を残すことによって、以前の価値に戻すという意味。そんな事故物件の部屋に数カ月住み、報酬ももらえるという仕事を選んだ、りさ子さんという31歳の女性の物語。

りさ子さんは不倫をしたがために、家を追い出され住むところもない状況下、相葉不動産でこの仕事を受けることに。何とか住む場所を得たものの、働く気にはならず、住むことで報酬を得るだけの生活。しかも転々と住む場所が変わることから、人付き合いをあまりしない方がよいといわれる。そんな彼女が何件目かの事故物件で住むことになったのは風呂もついていないような谷中の古いアパート。そこの大家さんが世話好きで、何かと声をかけてくるが、最初は相手にしないようにするものの、次第に打ち解けてきて、しまいには近所の定食屋でアルバイトをすることに。定食屋の息子の亮さんが、父親が入院して一人になってしまったため大家の真鍋夫人が強引に働けと言ったことがきっかけ。

次第に人づきあいができるようになった矢先に、別れた夫の父親が訪ねてきて、りさ子さんの不倫は、息子が仕掛けたこと、申し訳なかったと謝り、お金を置いていく。りさ子さんは不倫した事実は事実との思いもあったが、暫く落ち込む。そんなりさ子さんを好きになった亮君が何かと話しかけてくる中、丸の内のタワマンの仕事を引き継いでくれとの相葉の要請。44階の豪華マンションに引っ越すが何もやる気が起きない。そこに亮君が訪ねてきて元気づけてくれる。前任で住んでいた菅さんが姿を消した原因が、タワマンにある違法カジノで借金を作ってしまったことだと聞き、マンションの管理人相手に解決してくれとすごんで最後は痛快でした。

事故物件もそうですが、日本には膨大な数の空き家が生まれており、“負動産”問題は社会問題化している。にもかかわらず、東京にはタワマンが続々と建設され、親世代の住居は空き家となる可能性が高く、悪いスパイラルがおさまらない。全く都市計画は難しい。

今日はこの辺で。