柚木裕子「ミカエルの鼓動」

柚木裕子さんが医療、とくに最先端手術に関わる問題に取り組んだ作品「ミカエルの鼓動」読了。470Pの長編ながら会話が多い分、分量としてはそれほどの長編とは感じませんが、それでも広範囲に話を広げている分、分量が多くなった作品。

主人公はミカエルというロボットでの手術の第一人者である北海道中央大学病院の西條医師。彼は貧困家庭に育ちながら、持ち前の頭脳で北中大医学部を卒業し、現在はロボット支援下手術の第一人者として活躍する。彼は人の命を最優先にすることを心掛けるものの、将来の病院長までも見据える欲望もまた人並みに持つ。現在の院長である曾我部もロボットによる手術の普及で大学病院の価値をあげようとしているため、いわば西條の信頼すべき上司。しかし、その曾我部が真木という優秀な外科医を大学に招聘し、以後、西條と真木はライバル関係になる。曾我部の態度も変化していき、西條の疑心暗鬼が膨らんでいく。クライマックスは、12歳の少年の心臓手術を誰が執刀するかという話になり、結果的に西條が執刀するが、その過程でミカエルというロボットに欠陥があるのではないかという疑惑が西條の耳にも入り、西條は悩んだ末、ロボットが不具合を起こした場合を想定して、真木に助手を要請。真木もそれを受ける。いよいよ手術が始まり、ロボットに不具合が発生してしまう。真木と西条は必死で手術に取り組み、何とか成功させる。西條は、曾我部や企画担当の雨宮女史がロボットに欠陥があることを知っていながら、西條に知らせていなかったことから、西條は全てを世間に公表し、病院を去ることを決意する。

大まかなストーリーは上記の通りであるが、最終章では、西條が真木の生い立ちから現在に至るまでを探し求める話があるのですが、本筋が終わっているのに蛇足的になっているところに違和感がありました。

柚木さんの作品としては、全体に冗長的で緊張感や心に響くものが欠けているように感じました。

今日はこの辺で。