小川糸「食堂かたつむり」

小川糸さんの作品は初めて読みましたが、優しいタッチの人情ばなしがお得意なのか、あるいは料理にまつわる話が得意なのか、これから読み込んでいきたいと思いますが、本作「食堂かたつむり」は上記のいずれも含まれるほのぼのとしたお話。

主人公の「私」は、シングルマザーの家庭育ちでしたが、母親とはうまくいかずに15歳で家を出て、都会の祖母の家に住んで料理のお店をたくさん経験して、料理には自信があるお人。25歳になりますが、インド人の恋人と同棲していたものの、彼が突然私の貯めたお金や食器などをもって姿を消してしまう。祖母は既に亡くなっており、行くところがなく、止むを得ず母親の暮らす故郷の片田舎に向かう。母親はネオコンと呼ばれる建設会社の社長の愛人としてスナックをやっているが、何とか頼み込んで、かつて何かのお店をやっていた建物と資金を借りて、「食堂かたつむり」を開業。一日ひと組みしかお客をとらないその食堂は、口コミでいい噂が立ち、何とか経営が成り立つまでになる。なお、母親=おかん、学校の用務員をしている昔なじみの熊さんに世話になり、自慢の腕を振るって料理の腕をあげる。おかんは大きな豚をペットで買っており、その名前はエルメスエルメスの面倒も見て充実した生活だが、おかんとは未だに真正面から向き合えない。おまけにインド人の恋人がとんずらしたショックで声も出なくなり、筆談で会話するような状態が続く。

そして最後はおかんとの和解なのだが、おかんは身が固くネオコントは性交渉のないお付き合いで、余命いくばくもないがんに侵される。おかんは高校時代の恋人に再会して、結婚式を挙げることに。その披露宴の料理一切を私に依頼する。その条件として、エルメスの肉を使ってほしいと。エルメスとも仲良くなった私だが、旅立つおかんと一緒にエルメスを連れていきたいという思いを受入れ、料理で世界旅行をするようなバラエティーなものを用意するのだった。

そして結婚式の3週間後におかんは旅立ち、おかんが私宛に記した手紙で、おかんのわたしへの愛情を確認するのでした。

料理のレシピがたくさん出てきて、一緒にその料理を食べているような感覚も味わえました。

今日はこの辺で。