佐高信「原田正純の道 水俣病と闘った生涯」

水俣病関係書籍の第三弾は、佐高信作「原田正純の道 水俣病と闘った生涯」。
水俣病を勉強していて必ず出てくる方は何人かいますが、その中でも特筆すべき医学者、原田正純先生。
その生涯を公害病の患者の立場に立った活動をやってこられた原田先生は、75歳ですでに亡くなられていますが、その残した足跡は想像を絶する大きなものです。
1950年代から亡くなる直前まで、患者のところに足を運び、患者を掘り出してきたその活動と、彼のヒューマニズムを佐高氏が要約して書籍に現したのが本書。
熊本大学に入学してから水俣病と出会い、患者のところに足を運ぶうちに胎児性水俣病を掘り起し、胎児性もありうることを立証したことは大変の大きな貢献になりました。
彼の「中立」の概念、すなわち郊外の加害者側はふつう大きな力を持ち、被害者は弱者。両者の中立とは、真ん中ではなく弱者に寄り添うのが中立である、というのは誠に説得力があります。
そうした態度から、熊本大学では退職まで助教授のままでしたが、彼は教授職など望まなかったのでしょう。これは京都大学の反原発学者小出先生と共通点があります。
大学や学会もその立場はどうしても国寄り、大企業寄りになりがちな中で、あくまで患者に寄り添った態度は、あっぱれな人生でした。
今日はこの辺で。