原田マハ「常設展示室」

原田マハさんの短編6集を収めた「常設展示室」読了。6篇の共通点は、原田さんらしく、有名な絵画が物語の中に現れてくること。そして、一編を除き、40代女性が主人公であること。絵画に関する話題が満載でもあります。

「群青」は、NYメトロポリタン美術館に勤務する日本人女性が主人公。世界的にも有名な美術館で、キュレーターになるのは至難の業ながら、持ち前の努力で勤め上げているが、障害を持つ子供たちのための企画を練っている最中、自分の目の病が進行していることを知る。美術を扱う人間にとって目は最も大切なのだが・・・・。

「デルフトの眺望」は、大学で美術史を研究して、今では大手ギャラリーのディレクターとして世界中を飛び回る40代半ばの凄腕ウーマン。彼女には認知症気味の父親と、定職に就かずに、アルバイトをしながら父親の面倒を見る弟がいる。そして、父親の状態が悪化してきて、病院や施設が必要になっている中、弟に負担をかけているものの、なかなか自分がそばに入れないことにも悩む。親の介護を誰がするかは、いつの世も難しい問題。

「デルフトの眺望」は、彼女がオランダの商談を追えて、フェルメールの「首飾りの少女」を見に行ったものの、混雑にうんざりして、同じフェルメールの描いた絵画でした。

「マドンナ」も大手画廊に勤める40代女性が、一人暮らしの母親を心配する物語。「デフルトの眺望」の主人公女性の後輩にあたる役柄。女性には兄がいるが、青の兄も銀行勤めの忙しい身分。イタリア・フィレンツェでの商談の合間に、美術館に行ってラファエロにあってきたのでした。

「薔薇色の人生」は地方のパスポート窓口で派遣社員として働く40代女性が主人公。過去に結婚経験はあるが、離婚して今は一人でひっそり暮らす毎日。そんな彼女の前に、ダンディーな男性が窓口に現れて、胸ときめくが、実は詐欺師だった。騙されついでに財布に入れられていた美術館の入場券をもって観覧に行くと、これも期限切れ。常設展は入れたので入ってみると、そこにはゴッホのバラの絵が・・・

「豪奢」は、唯一の20代女性が主人公。絵画が好きで画廊に就職し、頭角を現したと思ったら、IT社長と出会って豪奢な生活を送ることに。絵もそんなに長く続く関係でもないことは薄々わかっている彼女。でも誘われてフランス・パリへ。後から来るはずだった彼ha仕事でドタキャン。仕方なく一人で美術館で大好きなマティスに対面。そこで彼女は彼との別れを決断すべく、プレゼントされたミンクのコートを置いて、美術館を立ち去るのだった。

「道」の主人公も40代のやり手女性美術評論家。日本の美術界を変革しようくらいの気持ちで、伝統ある絵画コンクールの審査方法を変更し、成功を収める。コンクールの審査に一枚の水彩画が提出され、既視感を覚えた彼女が探し出したのは、自分の過去だった。彼女は貧しい母親と兄の3人暮らしだったが、母の死によって兄弟は分れ離れに。大好きだった兄の消息はその後亡くなっていたが、コンクールの絵から、その兄にたどり着くのだが。最後の作品がやはり最も感動的な作品でありました。

今日はこの辺で。