浅田次郎「獅子吼」

久々に浅田次郎の小説を読む。「獅子吼」は表題作以下全6作の短編集。稀代のストーリーテラーの真骨頂がこの作品でも健在。
表題作「獅子吼」は、戦時中の動物園のライオンと元飼育係で、現在は兵隊になった若者の話。兵隊の食事の残飯を飼育していたライオンに食わせていたことが分かり、上官に自らの中で殺せと命じられる。しかし、先輩の兵士もやはり飼育係で・・・・。ライオンの立場からの描写もあり秀逸な作品。
「帰り道」は私が一番気に入った作品。スキーからの帰りのバスで隣り合わせた職場の後輩の男性に思いを寄せる先輩女性社員が求愛のポーズを盛んにとり、後輩も実は彼女が好きで、バスを降りるように誘うのですが・・・。なんで遠慮してしまったのか?その出来事のために一生独身を通すことになるなんて残念。
「九泉閣へようこそ」は、腐れ縁の男女が海岸のとある温泉旅館に宿泊。伝統のある旅館で、かつての賑わいが亡くなった旅館でお北死体遺棄事件・・・。
「うきよご」は、東大入学を目指して東京に出てきた少年が、姉の世話になる話。
「流離人」は、終戦の近いころ満州関東軍に配属された青年が、不思議な中尉殿に会い、彼のいうことを聴いたおかげで生きながらえた話。
「ブルー・ブルー・スカイ」はアメリカラスベガスで一獲千金を夢見てばくちに打ち込む日本人が小さな店のスロットマシンで大当たりしたものの、詩の大金が手に入るまでの怖い話。
以上の6篇ともに味のある作品でありました。
今日はこの辺で。