伊坂幸太郎「死神の精度」

イメージ 1

今最も直木賞に近い作家といわれる伊坂幸太郎。既にノミネートが5回を数えますが、そのノミネート作品の一つでもある「死神の精度」読了。
八日後に死を迎える人間に近づいて、その死の可否を調査し、可と判断したら予定通りその人間は死に、否となったら生きながらえる、という重要な任務に就く死神の千葉。可を出すのは簡単だが、千葉は最後の最後まで観察を続ける主義。ほとんどは可となるのだが、それまでの当該人間との関わりが絶妙な筆致で描かれます。表題作以下全6篇の短編連作集であるが、どの作品も味があります。直木賞をとってもおかしくない作品と思うのですが?
表題作はメーカーの苦情係の電話対応女性が死の対象。同じ男からご指名で苦情の電話が何度もあり、悩んでいるが、その電話の主にはいい意味での企みがあり、千葉は死を否とする。確かに親でほしくないキャラクター。
それ以上に死んでほしくないキャラクターが「死神と藤田」の藤田。本当の意味での古き善きやくざ。でも千葉の判断は・・・
「吹雪に死神」は、ある山の中のホテルに閉じ込められた6人のうち、3人が殺されていく設定。千葉が取り付いている年配女性は生き残るが、何故3人が殺されたのか?
「恋愛で死神」の殺される若者はさわやかな印象を与え、一番死んでほしくない青年。折角恋愛が成就するはずだったのに、残念。伊坂も彼だけは殺してほしくなかった、との私の印象。
「旅路で死神」は母を刺し、勢いで街で若者を殺した殺人犯に取り付いた千葉。凶暴な中にも人間味がある若者の幼少期の恐ろしい体験が語られます。
最後の「死神対老女」は70歳の現役美容師と千葉との葛藤。千葉を死神と察した老女は、千葉にある難題を押し付ける。その難題の理由とは?この老女にももっと長生きしてもらいたいのですが。
奇抜な設定ながら、6篇とも違和感なく読めました。
今日はこの辺で。