柚木裕子「臨床心理」「最後の証人」

柚木裕子「臨床心理」「最後の証人」の二冊読了。「検事の本懐」と「検事の死命」を読んで以来の柚木ファンとなり、今回の二冊を手に取る。
「臨床心理」は、第7回「このミステリーがすごい」大賞作品であり、柚木裕子のデビュー作品?
「検事の本懐」よりは若干稚拙な感じがするが、彼女の作品はそれでも読んでいて引き込まれます。
主人公の美帆は医療機関臨床心理士を務めているが、その病院に若い患者が入院する。彼は話している相手の言葉を色で見ることができ、その色によって嘘をついているかどうかを見極める特殊能力があり、美帆も次第にその能力を信じるようになり、暗い闇の世界が暴かれていく。「このミス」ですから、当然犯人がいるのですが、若干その犯人が身近すぎる、あるいは唐突すぎる感があり、そこに稚拙さを感じる小説ではありました。
「最後の証人」は「検事の本懐」、「検事の死命」と同じく、佐方貞人を主人公とした法廷もの。但し、彼が検事を辞め、弁護士になってからの話。
この小説では、犯行が順序立てて描かれるのですが、私はすっかり騙され、被告が誰なのかを勘違いしてしまいました。そこが作者の狙いなのか、それとも私が鈍いのか?何となくどんでん返しをくらったような気持ち。殺人事件であることから、被告の過去などは警察によって十分に調べられるのでしょうが、その事実がないのはちょっとおかしくはあります。たった7年前の自動車事故のことですから、当然警察が裏を取るのではないかと思いますが?
それでも、やっぱり法廷劇は一気に盛り上がる場面があります。
柚木裕子には、今後とも佐方貞人を主人公とした法廷小説を期待したいところです。
今日はこの辺で。