浜田寿美男「袴田事件の謎」

心理学者の浜田寿美男氏が、袴田事件における容疑者袴田さんの警察・検察の取調調書と録音テープから、19日間犯行を否認した後ついに自白し、自白後の犯行内容の変遷の経緯から、浜田さんが犯人ではないことを心理学的に検証し、弁護側の証拠として「鑑定書」の形で法廷に提出された内容を著述した「袴田事件の謎 取調録音テープが語る真実」読了。

袴田事件は、上記自白したものの、法廷では一貫して否認し、証拠を故意に改ざんしたと疑われる状況下、最高裁で死刑が確定した事件。静岡地裁段階では、担当した熊谷判事補が一人無罪を主張したものの、合議の結果有罪とされ死刑判決を受け、第一回の再審請求は却下され、第二回目の再審は地裁で無罪を勝ち取ったものの、高裁では逆転有罪。現在最高裁で継続中の事件。最新地裁の無罪判決で釈放され、高裁では逆転したものの、拘留されていないと言う異常な状態が続く。

浜田氏は、冤罪事件の自白調書の心理学的側面からの鑑定を多く手掛けている方。そもそも袴田事件では45通作成された取調調書のうち44通が証拠採用されず、検事作成の1通のみが証拠となり、かつパジャマの血液が物的証拠となり起訴されたもの。ところが後半途中で溝蔵から血染めの作業服など五点の衣類が見つかり、パジャマの血液で自白した証拠はチャラになってしかるべきもの。にもかかわらず、作業服にはパジャマよりも多くの血液がついていたことから、証拠が強固になったというあり得ない経過があった。そこには、刑事司法の証拠捏造が疑われ、最新地裁無罪判決はそこまで踏み込んだものの、却下となったひどい裁判。裁判所には正義と公正がないことを証明している事件でもある。

折角の浜田鑑定に対して、裁判所は徹底的のこき下ろしている表現があり、そっくりそのまま同じ言葉を返してやりたい気分になるのもうなづける。浜田市の怒りは相当なものである。

それにしても、現在最高裁で継続中であるが、浜田氏も高齢で、認知症も進んでいると聞いている。最高裁はどんな答えを出すのか。衆人の見るところ、物的証拠は大きな瑕疵(捏造疑惑)があり、無罪が正解。しかし、最高裁は浜田氏の寿命でも図っているのか、音沙汰がない。「すべて証拠の評価は裁判官の心証による」そうだが、そんな優れた裁判官、例えば木谷明氏のような方がいるのであれば安心だが、有罪ありきで裁判に臨んでいる裁判官には、退場してもらいたいものである。

今日はこの辺で。