奥田英朗「沈黙の町で」

奥田英朗「沈黙の町で」読了。この作品は朝日新聞に連載されていたため、文庫になったら是非読んでみたいと思っていた作品。新聞の連載小説というのは、たまに目をとめた読むことがありますが、最初から最後まで読むことはまずありません。作家も長期の連載だとさぞや疲れるのではないかと思います。
さて、この小説は奥田作品にしては、歯切れが悪いというか、何か物足りなさが残りました。
中学生のいじめを扱った作品ですが、滋賀県の大津であった中学生のいじめ自殺事件をモチーフにしたような設定。中学2年生のテニス部の生徒が校内で亡くなったことから話が始まり、その死亡事件か事故に関するまわりの生徒や親の葛藤が描かれます。
中学生の残酷さ、いじめが当然に行われる土壌の存在を否定できないことが語られますが、生徒の死に対してここまで沈黙を守れるのか?自分の将来がかかっているにもかかわらず、真実を語らないことがあるのか?この辺が私には理解できないところでした。その意味で、奥田作品らしくない気がしたのですが。
それにしても奥田作品の読みやすさ、読者の目を離さない語り口は見事なものでした。
今日はこの辺で。