瀬尾まいこ「温室デイズ」

瀬尾まいこ作品10作目は、とある中学校の学校崩壊、学級崩壊といじめを描いた作品。いじめは小説の題材としては大変多く、重松清先生などは得意中の得意ではないかと思うのですが、瀬尾さんの本作「温室デイズ」も、信じられないような学校崩壊・学級崩壊が描かれます。本作は2004年当時の雑誌連載作品を単行本化したものですが、こんなひどい学校が実際にあったかはわかりませんが、先生も知らんぷりの学校では救われません。

さて、本作の主人公は中学3年生の中森みちるさんと前川優子さんのお二人。二人は小学校からの知り合いで、小学校時代は優子さんがいじめの対象になり、みちるさんはいじめる側で、結果的に優子さんは隣の小学校に転校していき、中学になってまた再会した設定。

みちるさんと優子さんが変わりばんこに「私」として主役で登場する五章から構成され、主な登場人物はやくざの父親を持つ伊佐瞬、クラスのパシリ役である斉藤君、スクールサポーターの吉川先生など。

みちるさんは学校崩壊、学級崩壊を立て直そうとみんなに訴えたことからひどいいじめにあうことに。みちるの友達を自認する優子は、いじめられるみちるを助けることができず、それに耐えられず学級にはいかず、相談室と言われる学校内の部屋で過ごしたり、街の施設に行ったり、スクールカウンセラーの診断を受けたりして何とか過ごす。みちるはどんなにいじめられても学校へ行くことを続けて、いじめが収まるのを待つ強い生徒。結局受験シーズン到来でいじめも沈静化していき、何もなかったかのように卒業していく彼女たち。

あまりにも学校崩壊描写がすさまじく、私たちロートル世代には信じがたいのですが、平気でタバコを吸ったり、金髪にしたり、暴力を振るわれたりと、すさまじい崩壊振り。教師があまりにも無力で何も解決しようとしない姿が描かれるが、こんな学校があったら、今時のモンスターペアレントが黙っていないのではないかと思うのですが、20年前の学校はこんなにも荒れていたのか?

それでも読む分には面白い作品でした。

今日はこの辺で。