薬丸岳「ガーディアン」

「天使のナイフ」以来、社会派推理小説作家として問題作を発表し続けている薬丸岳氏。骨太作品が多いなか、今回読了したのが、中学校を舞台にしたサスペンス作品「ガーディアン」。

半年前に公立中学に赴任してきた英語教師の秋葉を主人公に、荒れていた学校が、不思議にも今は何ら不良生徒がいない平穏な日々となっている中、その不思議に迫っていく内容。登場するのは学校の生徒多数と教師、生徒の親たちが少々。その中で、現在長期の不登校となっている生徒が1名いるほか、短期で多くの生徒が不登校になっていることから、何か裏に隠されているのではないかと疑い、生徒や先生に説明を求めるが、皆が口が重く、解明に手間取る。実態は、かつてひどいいじめ事件にあった生徒を救うために、親友たちが独自の自警団をつくって、そうしたいじめや非行を行った生徒や先生を「無視」することで排除、あるいは不登校に追い込み、反省させるシステムを作り上げていることにたどり着くというはない。

学校におけるいじめ事件は、大きな自殺事件があっても決してなくならないと言われるが、この学校で生徒たちが作り上げたシステムは、非常に効果的な手段。勿論、中学生が刑事や探偵並みの創作力があるわけがなく、非現実的な話ではあるが、いじめ撃退策としては、うまくできているともいえる。

自分の中学生時代を思い出すと、いじめの経験はないが、対教師や対友達に対する繊細な精神構造を持っていたことはたしかであり、中学生が精神的に非常に弱い時代ではないかと考えられる。今の中学校の教師がどういった問題意識を持ち、問題が発生した場合にどんな対応力を持っているかはわからないが、教師がすべて把握することは困難なことは間違いない。生徒間の方が情報が集まってくる可能性は大いにあるので、あながち絵空事とも言えず、薬丸さんのアイデアは一つのケースとしては説得力もある。

本作品中には、優しく、かつ鋭い嗅覚を持った刑事の代表である夏目刑事が出てきて、彼が活躍するのかと思いましたが、それはなく、秋葉先生があくまで中心でありました。

今日はこの辺で。