中山七里「七色の毒」

中山七里先生には珍しい短編集「七色の毒」読了。私が初めて読む中山先生の短編ですが、短編でもいい作品が書けることを証明している7編の短編。事件解決するのは、おなじみの警視庁、犬養隼人刑事。

「赤い水」は、かつて工場排水が原因で親族を殺された若いバス運転手が、バス事故に見せかけて、工場の社長だった男を殺す話。運転手が証言する姿を見て疑いを持ち事件の真相に迫る。もう一人の犯人がいるというどんでん返しも用意されている。

「黒いハト」は、中学校でのいじめを原因とした生徒の自殺がテーマ。いじめの加害者生徒の父親が都議会議員ということもあり、学校や教育委員会は自殺を否定する。しかし、PTAはそんな学校や教育委員会を許さない状況。そして、この事件にも実は本当の、影の真犯人がいるというどんでん返し。

「白い原稿」は、才能がないにもかかわらず、小説を書いて出版社に送り続ける作家の卵たちの見苦しいまでの姿を描く。出版社の営業戦略で新人長を獲得した才能のない作家が殺され、他の作家の卵が犯人とされるが、裏には出版社の編集者の影が。

「青い魚」は、釣具店を営む中年で独身の男に若い女が言いよって、その兄と称する男との奇妙な3人の生活が始まる。中年男は家族の味を取り戻した如くふるまうが、きょうだいと称する男女は中年男の保険金が目当てで、釣り船の上での殺人を決行。しかし死んだのは男女だった。男女を殺したのは誰か。簡単には騙されない男の復讐は怖い。和歌山のドンファンも孫のような女に殺されたといわれているが、さて真実はいかに。

「緑園の主」は、ホームレスの男が不良中学生に放火され重傷を負う事件が発生。その中学生たちはサッカーの代表選手たちで、サッカー練習中にも林家の敷地にボールを放り込み、何度か花壇の花を追っていた。そこに住んでいるのは老夫婦で、おばあさんの方は認知症。ホームレスの男と老夫婦の間にはガーデニングと殺虫剤があった。

「黄色いリボン」は、性同一性障害と思っている小学生が、学校から帰るといつも女装して外出するのが楽しみ。名前もミチルと女性名に変えて両親からも積極的に女装を認められているという家庭。男なのに女の心を持つように両親から仕向けられたがための性同一性障害が本当にあるのか否かわかりませんが、ありそうな怖い話。

「紫の献花」は、第一話の「赤い水」の続編。バス事故ではほかにも負傷者がいて、その中には体育大学の有望な短距離選手がいたが、事故で選手生命を絶たれてしまう。そんな彼女に生命保険1億円がかけられ、保険をかけていた男が何者かに殺される。殺されたのはバス会社の運行責任者だが、人格者でもあった。その裏事情は。

「赤い水」と「紫の献花」が結びつくところに味な趣向がある作品でありました。

今日はこの辺で。