アーサーミラー「るつぼ」観劇

アーサーミラー原作の戯曲「るつぼ」を新国立劇場で観劇。間に15分の休憩を含む、3時間45分の長大作ながら、さすがにアーサーミラーの代表作、飽きさせることがない作品。役者陣もすごい迫力で、久しぶりに演劇に圧倒されました。
物語は1692年にアメリカ、マサチューセッツ州で実際に派生した魔女狩り、セイレム裁判を描いたもので、アーサーミラーがこの作品を書いた時期にアメリカに起こっていた赤狩りマッカーシズムを痛烈に批判するために書いたとも言われています。
ある一人の嘘やデマから群集心理が働き、密告や告発から次々と犠牲者が生まれ、取り返しのつかない事態にまで発展してしまう恐怖を、我々は今まで歴史の中でいくつも見てきました。ドイツナチスユダヤ人虐殺はヒトラーと取り巻きのプロパガンダのたまものであり、中国の大躍進や文化大革命も、毛沢東や一部の取り巻きのなせる技でした。こうした権力者が巻き起こす恐怖は勿論ですが、名もなき者からのちょっとした嘘や噂から発生する、「るつぼ」のような恐怖もまた、残酷な結果を生み出してしまいます。
今日のネット社会は、こうした危険性をさらに拡大させる装置となってしまうことは、尖閣諸島国有化を端に発した中国の半日デモの拡大をみれば明らかです。
東日本大震災時の被災者の対応は世界の称賛を浴びましたが、あの時何かのデマが広がっていたらどうなっていたか?現に関東大震災のときは、事実無根の流言蜚語に踊らされた人々によって朝鮮人虐殺があったとの歴史認識もあります(これについてはまさに不確定で、明確な証拠はない)
さて、アメリカの赤狩りについては、いまだに評価が分かれているとの情報があります。一部にはマッカーシーの名誉回復を図ろうとの動きもあるようですが、そのようにならないことを願ってやまないところです。
今日はこの辺で。