映画「沈黙のレジスタンス ユダヤ孤児を救った芸術家」

2月8日(火)、ギンレイホールにてフランス映画「沈黙のレジスタンス ユダヤ孤児を救った芸術家」鑑賞。マルセル・マルソーは、フランスの偉大なるパントマイム・アーティスト。別名、パントマイムの神様、沈黙の私人と呼ばれた方。その「沈黙」は、パントマイムが言葉ではなく、身体ですべて表現することからつけられた名称でしょう。その「沈黙」を日本で表題にしたのでしょうが、原題は「レジスタンス」のみ。

フランスは第二次大戦であえなくドイツに降伏し、その後はイギリスに亡命したドゴール将軍の下、国内ではレジスタンスが活躍するのですが、その中にマルセル・マルソーが加わり、多くのユダヤ人孤児をスイスに逃避させ、救ったという事実が最近明らかになり、その実話をもとに作られたのがこの映画。1923年生まれというので、舞台となる1945年前後ではまだ20歳そこそこ。多少の誇張はあるのでしょうが、父親がアウシュビッツで殺されていたユダヤ人という境遇で、勇気ある行動をとっていたことは事実。本作について、あまり予備知識なく鑑賞したのですが、本格的なホロコースト映画となっており、やはりというか、ドイツ軍将校の悪辣さを徹底的に描きます。特に、「リヨンの虐殺者」と言われたクラウス・バルビー親衛隊中尉役の演技は際立ちます。クラウス・バルビーは、当然に戦犯として戦後フランスがアメリカに身柄を要求するのですが、アメリカは反共政策に役立つとして彼を利用するため、身柄引き渡しを拒否。アメリカが一部の日本人戦犯に対してとったような反共のための寛大措置が、ドイツ人将校に対しても取っていたことが分かる。彼は最終的にボリビア国籍を取得し、当時のボリビア軍事政権顧問となり、更には起業家としても成功し大金持ちになる。しかし1982年にボリビア軍事政権が倒れ、1983年にようやくフランスに引き渡され、リヨンの法廷で終身刑を言い渡される。1991年の獄中死するが、こうした戦争犯罪人が生き延びてしまった当時の冷戦を迎えつつあった世界情勢を垣間見る思いである。

映画からはそれたが、こうした断面も勉強させてくれる映画でありました。

今日はこの辺で。