Netflixドキュメンタリー「科学者の麻薬スキャンダル」

アメリカの刑事司法関係ドキュメンタリーを大量に製作しているNetflix。昨日から今日にかけてみたのが「科学者の麻薬スキャンダル」。

マサチューセッツ州と言えば、ボストンを州都として、ハーバード大学マサチューセッツ工科大学などの世界屈指の頭脳を集める大学が存在し、アメリカ北東部の、何となくエスタブリッシュメントたちが暮らす州のようなイメージがありますが、そこはやっぱりアメリカ、犯罪はたくさんあるようです。

本作品は、麻薬関係の刑事事件において、警察・検察の刑事司法関係の不祥事を追及した作品。麻薬犯罪には当然、証拠物としての各種麻薬がつきものですが、それが果たして本物の禁止薬物なのかどうかが、犯罪か否かの最大の証拠物。そしてその証拠物を鑑定するのが法的な検査機関で、実際に鑑定するのが化学者。その科学者の鑑定が即犯罪の有無を決めることになります。その化学者簿鑑定に何らかの瑕疵があったらどうなるのか?その瑕疵が個別件名の調査法などに瑕疵があっただけなら、その件名だけやり直せば済むことですが、化学者のそもそもの仕事のやり方や、化学者としての欠陥があったならどうなるでしょう。それを問うたのが本作。

とにかく犯罪王国アメリカですから、マサチュウセッツとはいっても麻薬に絡む犯罪は膨大な数に上り、鑑定すべき数量も相当数に上ります。

本作では2人の女性化学者自身に瑕疵がありました。一人は根本的に手抜きを行っていたこと。同じような薬物があったら調査せずに同じように鑑定書を偽造していたものです。そのため、この女性が処理する鑑定数が通常の4倍もあり、称賛されていたとのこと。ただし、実は上司は薄々感ずいていたことも発覚しました。さらに、検察官とのメールなどから、検察官も感ずいていたのではないかとの疑惑があります。彼女の処理した件数は3万件ほど。

もう一人は自分が調査した薬物の一部を使用して薬物中毒になり、過去10年間の調査に瑕疵がある可能性が出てきてしまった事件。この事件を追及した弁護士に対して、検察は虚偽答弁し、調査やり直しを判事が拒否したものの、司法長官が変わったタイミングで再調査を訴え、本人の自供を得て同じく3万件近い鑑定に瑕疵があったことが判明した事件。

さて、この二人の鑑定の結果有罪確定した収監者などはどうなったかですが、すべて判決が否定されたとのこと。彼らがどの程度釈放されたかは定かではありませんが、麻薬犯罪者が大量に釈放されることに対して、州民は恐怖を覚えたことでしょう。

日本でも科捜研がDNA鑑定を間違えて、足利事件の菅家さんがそれを決定的な証拠として冤罪となったことがありますが、こうした科学的証拠と言われるものにも、それを扱う捜査官なり専門官の資質により瑕疵が生まれ、人生を狂わされる方がいるを、刑事司法に携わる人間は肝に銘じるべきでしょう。

今日はこの辺で。