藤沢周平「橋ものがたり」

北陸旅行に持参したのが「鬼平犯科帳7巻・8巻」と、藤沢周平の「橋ものがたり」。
「橋ものがたり」は、江戸庶民の悲哀、愛と別れを、橋を関わらせて情感たっぷりに描いた短編小説。「約束」から「川霧」までの10篇が収納されています。
「約束」は5年前に橋の袂で再会を約した男女の悲哀。男は奉公を勤め上げ約束どおり橋に向かう。女は男に実を売るまでになった自分を恥じて、会うことをためらう。そんな男女の悲しい気持ちが情感たっぷりと語られ、最後はハッピーエンド。立派な青年でよかった。
「小ぬか雨」は、悪い女に騙されてその女を殺して逃げている若い男をかくまったおすみ。おすみには下駄職人のいい名づけがいるが、その職人を好いてはいない。おすみは逃げてきた青年にほのかな愛情を抱き、青年も同じように。でも結ばれることはなかった。
「思い違い」は、顔かたちが悪くて女に縁がない源吉が、あるとき男に絡まれている女を助ける。その女おゆうは、実は女郎。毎朝夕源吉が橋ですれ違っていた女だった。ただし、朝おゆうは夜の勤めを終わって帰り、夕方は勤めに出るという、源吉の思い違いがあった。それでも気の優しいおゆうと源吉はやがて結ばれるという、これも希望のある話。
最後の「川霧」は、永大橋で気分が悪くて苦しんでいる女おさとを助けた新蔵。二人はやがて一緒に3年間暮らすが、ある日突然おさとは姿を消す。新蔵はおさとを探すが・・・。これも最後はハッピーエンド。
10篇ともに心にしみるすばらしい作品でした。
今日はこの辺で。