桜木紫乃「誰もいない夜に咲く」

桜木紫乃「誰もいない夜に咲く」読了。
北海道の各所を舞台にした七つの短編を収録した作品。相変わらず、北海道の地域描写が見事なこと、力強い女性を描いていることが翌朝であり、裏を返せば頼りない、或はだらしのない男が女性のパートナーとして出てきますが、救いようのない結末の話はありません。
「波に咲く」は、嫁の来てがない牧場で中国人の女性を嫁にした男が、その女性を大事にする話。彼はまともな男でした。
「海へ」は、身体を売る商売をしている女性とひものような男、そして自分の身分を偽り女をひいきにする客の話。ひもの男と女をひいきにする男の人間性が対照的でした。
「プリズム」は、同じくひものような男と暮らす女が、若い学生に惹かれて抱き合うが、そこにひも男が現れて殺人が・・・。三面記事的なにおいはしません。
「フィナーレ」は、風俗記者をしている男がストリッパーの取材をして、そのストリッパーの人柄に触れて人生をやり直す話。素晴らしいストリッパーでした。
「風の女」は、ひっそりと書道教室をする女が、遠い昔に家を出た姉の遺骨を持って現れた有名な書道家と心を通じ合う話。
「絹日和」はかつて着付けを商売にしていた女が、師匠に結婚式の着付けを頼まれ、これもまたひものような男と別れる決心をする話。
最後の「根なし草」は、札幌で新聞記者をしている女に、かつて家族づきあいをしていた男と再会し、過去の親子関係を思い出す話。離婚したものの、前夫との間に子供ができてしまったことに対して、どうすべきか悩みますが、強い決断をします。
いずれの作品も情感豊かに、かつ地域描写を繊細に描き、北海道の厳しい気候の中にたくましく生きる女性を力強く描き切っています。
今日はこの辺で。