道尾秀介「龍神の雨」

道尾秀介作品の連続読み、今回は2009年刊行の「龍神の雨」読了。

境遇が似た二組のきょうだい、蓮と楓は、幼いころ親が離婚して父親が家を出てしまい、母親が睦男という男と再婚。その後すぐ母が交通事故で亡くなり、血のつながらない父親と暮らす。辰也と圭介の兄弟は、母が海で心臓発作で亡くなり、父親が里江さんという方と結婚。しかし2年後に父親が病死し、同じく血のつながらない里江さんと同居する。

ずーと長い雨が降り続ける埼玉県のある町が舞台。蓮と楓の父親、睦男は母が亡くなって以降仕事にもいかず蓮と楓に暴力をふるうダメ男と化す。蓮は楓が睦男から性的行為をされたと訴えたため、睦男をガス中毒で殺すことを考え実行に移す。しかし、帰宅すると楓が睦男に侵されそうになったため殺したと話し、二人で秩父の山中に埋める。

一方、辰也と圭介の兄弟は、蓮が働くお店で万引きをして蓮に見つかり、蓮とのつながりができる。だが楓と辰也は同じ中学の1学年違いの生徒で、辰也は楓に好意を陰ながら持っていた。辰也と圭介は、蓮と楓が何か重いものを雨の中アパートから運び出すところを目撃し、辰也が後に残っていた血の付いたスカーフを拾う。そこから二組のきょうだいの疑心暗鬼が始まることに。蓮と楓のアパートに脅迫状が届き、楓はそれが達也の仕業と思い込むことになるが、それを蓮には言えない事情があった。連が勤める商店の店長兼オーナーの半沢は、気さくな男で蓮をかわいがる。そんな描写が、この小説の暗示ではないかと思わせるが、決定的ではない。ある日半沢から蓮に、今日は休店にするとの電話が入ったため、蓮は母親の墓に行くことに。そこで管理人から、睦男が数カ月前から毎日背広を着て墓に来ていたことを伝えられ、自分は何か思い違いをしていたのではないかと思い、睦男の部屋を調べると、就活中であったことを知る。更に思い違いであった疑いを深める。

一方、圭介はなぜ辰也が里江さんを無視するような態度をとるのかを知るため、里江さんに直接、母親の死について関係しているのではないかとの疑問を投げつけてしまい、里江さんは大きく落胆。圭介はとんでもないことをしてしまったことを後悔する。

睦男の死に誰が関係していたのかは終章で明らかになり、全ての疑惑に半沢が絡んでいたことが、建築中のビルの最上階での対決の場でわかり、半沢は圭介と蓮によって突き落とされる。

道尾さん独特のミステリーの香りを色濃く感じる一作でありました。

今日はこの辺で。