連城三紀彦レジェンド

当代の売れっ子ミステリー作家、綾辻行人伊坂幸太郎小野不由美、米澤穂積の四氏が、連城三紀彦の短編ミステリー6篇を選んだ短編集。久しぶりの連城作品に改めてため息が出ました。
私自身は収録された作品のうち「依子の日記」、「桔梗の宿」、「親愛なるエス君へ」は既読ですが、この3篇も含めて、いずれも何度読んでも感慨深い作品でした。
「依子の日記」は、長野の片田舎に引っ越した作家とその妻のところに、編集者を名乗る若い女が来て、同居を始める。妻とその女はお互いに嫉妬する中となり、作家の夫は若い女の殺害を妻に持ちかけ実行するのだが、妻の日記が事の真相を語るという複雑な話。連城作品のにおいがまず立ち込める一遍。
「眼の中の現場」は、医者の夫が誤診で妻ががんであることを知り、それを知ってしまった妻が自殺してしまうのだが、実はそこには複雑な人間関係が絡み合っていた。
「桔梗の宿」は傑作中の傑作。六軒端という遊興街で起きた殺人事件。時代背景は大正か昭和初期の頃。殺された男の手には桔梗の花が握られていた。そこから、若い刑事が一軒の置屋に16歳の女を訪ね真相を探ろうとするが、その女にかつて田舎で売られていった女を重ね合わせる。16歳の女は、実はその若い刑事に思いを寄せていたことで・・・・。情感あふれる作品です。
「親愛なるエス君へ」は、かつてパリで起きた日本人留学生によるベルギー人女性殺害、猟奇事件を題材にしたもの。この作品だけは、あまり共感できない作品。
「花衣の客」は、かつて母親のところに通っていた男が氏を間際にした病床で、母親の娘に真実がつづられた日記を渡す。娘はその男が母親に思いを寄せていたと思っていたが、実は真実は違うところに。
最後の「母の手紙」は非常に短い作品ながら、あっと驚く最後が待っているという、連城の真骨頂がある作品。桔梗の宿と母の手紙には、目を熱くしました。
連城氏は恋愛ミステリーの魔術師のような存在ですが、確かに最後まで予測がつかない男女の関係をマジックのように仕上げるすごい才能を披露しています。
今日はこの辺で。