島本理生「ファーストラブ」

昨年上期上期の直木賞受賞作、島本理生さんの「ファーストラブ」をやっと読了。図書館に予約していましたが、予約が多く半年以上でやっと順番が回ってきました。

昨今は芥川賞直木賞とも女性作家の活躍が目覚ましいく、直近の第161回では候補作6人がすべて女性と話題になりました。島本さんは芥川賞に4回ノミネートされ、かつ直木賞も2回目の候補。島本作品は初めて読むのですが、「ファーストラブ」も芥川賞的な雰囲気も漂う作品に感じました。かつて松本清張先生が「或る小倉日記伝」で芥川賞を取りましたが、この作品も当初は直木賞にノミネートされたものが、芥川賞にチェンジしたことがありましたが、それを思い出した次第。

さてこの作品の真価ですが、選考委員会でもそれほど圧倒的な支持がなかったことからも、いまいち微妙な出来具合。この作品がもともと別冊文芸春秋に連載されたものの単行本化で、極めて主催者的立場の文芸春秋を忖度したんではないかと思われるような気がしないでもありません。

物語は、大学4年生の女性が養父を殺した疑いがかけられ、果たして本当に殺したのか否かという本筋に、周りの人間模様を描く内容。最も小説のネタになっているいじめや虐待をテーマにして、果たして親子関係はどうであったのかという謎を、女性心理療法士とその夫、夫の弟の弁護士などの関係も交えて説いていくのですが、私には何か盛り上がりに欠ける、中途半端なミステリーになったような印象。タイトルから受ける印象は恋愛小説かと思いましたが、それとも違い、やはりミステリーの範疇に入る作品であり、その意味で中途半端な作品に感じた次第。

今日はこの辺で。