重松清「みぞれ」

新年も重松清から出発しました。表題作以下11篇の短編集。みんなそれなりに味わいのある作品ですが、私が「はっ!」としたのは表題作の「みぞれ」。
核家族化、少子化の中で、子供が親の老後の面倒を見るという、今までの当たり前の家族の習慣が失われつつありますが、そんな現代の家族観を批判している?かのような作品。
親は次第に歳をとり、やがて亡くなっていくのですが、そんな親を見つめる息子の心の中をずばり描いています。姥捨て山は昔からある言葉ですが、歳をとって、ボケも始まった親に対して、「もっと生きろ」と言うことをためらう息子。年老いた両親を二人だけにしておくことの罪の意識と、それでも一緒に住むことにためらう息子の内心。私が同じ立場だったら、おそらくこの息子と全く同じ行動と考えを持つのではないか。ずるいのですが、これが現実のような気がします。
もう1篇「望郷波止場」。20年前に歌手デビューして、すぐに泣かず飛ばずになり引退し、今は故郷に帰って飲み屋をやっている天女さん。彼女を慕ったかつての同級生の男3人。そして彼女をテレビに出そうとするテレビ局の二人。テレビという残酷な世界をうまく描いています。これだけずうずうしくなければテレビ界ではやっていけないのか?寂しい思いが募ります。
今日はこの辺で。