熊谷達也「懐郷」

金曜映画の日が復活し、今日はアメリカ映画「フィクサー」鑑賞。新宿武蔵野館は1フロアに3室があるシネコン型ですが、観客席がいずれもフラット。たまたま私が座った席の前のお客さんが、本編が始まると同時に腰を伸ばし、私から見て画面の半分が隠れる格好になりました。これでは字幕がほとんど読めないため左右に顔を動かしながらの鑑賞。更に悪いことに、その観客はしきりに動くのです。腰でも痛いのか、頭を前のめりにしたり、背筋を伸ばしたり、どうも落ち着きません。そんなわけで、その動きが気になってストーリーに熱中できず、中途半端な映画鑑賞となってしまいました。やっと最後に近くなって、背もたれに身体を預ける姿勢になり、画面が目一杯見れるようになりましたが、時既に遅し。躊躇せずに席を替えていればよかったのに。
熊谷達也「懐郷」読了。ふるさとをテーマにした7編の短編集。最初の「磯笛の島」は能登半島と思われる地方の島を故郷とした話。熊谷はどうしても東北人のイメージがあり、次の「オヨネン婆の島」とともに若干違和感がありました。しかしながら、「磯笛の島」は見事な夫婦愛を描いた感動作。
そして最後の3篇、「鈍行列車の女」、「X橋にガール」、「鈍色の卵たち」はいずれも東北を故郷とした作品。どれも熊谷の真骨頂。特に「鈍色の卵たち」は高度成長期を迎える前の金の卵といわれた集団就職列車で東京に出た若者を思う教師の切なさを存分に描いた出色の作品。
できれば「X橋のガール」で、主人公の女性がハッピーエンドでエレベーターガールになってほしかった、と言うのは私のわがままでしょうか。
今日はこの辺で。