真保裕一「灰色の北壁」読了

久方ぶりに真保裕一作品を読みました。表題作を含め3作とも山に関わるお話。やっぱり山にはロマンがあり、死があり、家族の悲しみがあります。
「黒部の羆」は羆と呼ばれた元山岳警備隊員に助けられた二人の山男の葛藤の話。エリート登山家として歩もうとする男と、山から見放された男。この二人の間には登山スキルの差は何もなく、あるのは対抗心。そして、羆も実はかつて遭難して助けられたことがあったことが最後でわかるといった展開。
「灰色の北壁」はカスール・ベーラという架空のヒマラヤの高峰の北壁を征服した男と、それ以前にこの高峰を征服した男を、ライターが追い、真実にたどり着く話。正に男のロマンが漂い、心地よい読後感が味わえる。
最後の「雪の慰霊碑」は息子を山でなくした父親の悲しい登山と、彼を追いかける息子のかつての恋人と甥の葛藤。息子の恋人が、息子の亡き後、その父親を好きになる構図はちょっと違和感がありますが、この辺はさらっと流しているため、そんなに強くは浮かび上がらず、どろどろ感はなし。
真保作品の読書暦はまだ少ないので、これからまとめて読んでみることにしましょう。
今日はこの辺で。