道尾秀介「いけないⅡ」

道尾秀介さん「いけない」シリーズ第二作「いけないⅡ」読了。道尾さんの傑作部類に入るのではないかというシリーズだけあって、非常に興味深く読めた作品。構成が連作短編風にうまく繋がっています。

第1章「明神の滝に祈ってはいけない」桃花は両親と姉の4人家族だったが、姉の緋里花は1年前から行方不明となっている。緋里花は自転車で家を出て、その自転車が山のふもとに置き捨ててあったことから、近辺が捜索されたが、手掛かりがなく1年が過ぎてしまった。桃花は何とか姉の足跡をたどろうとしてたどり着いたのが明神の滝。そこには避難小屋があり、小屋を管理する男を不審に思い、次の日その男が小屋を出たことを確認して小屋の中を捜索。そして大きな冷凍庫の中身を見て驚愕。そこに男が小屋に帰ってきて桃花は必死に逃げるのだったが。

第2章「首なし男を助けてはいけない」1章とは話が変わって小学生の真の経験する話。真は同級生の3人と肝試しをやろうと約束し、生意気な一人タニユウをひっかけようと画策。真の引きこもりのおじさんに首なし人形作りを頼み、それを肝試しの現場まで運んでもらう。そこでおじさんが運転ミスして人形が流されたと思った真だったが、叔父さんが人形のようなものが流されているところを見て何かつぶやく。実は叔父さんはタニユウを車ではねたのかと思ってしまう。それは全て真が叔父さんを誘い出したことが原因で起こったことで、言葉が発せられなくなってしまう。でもタニユウは関係なく生きていた。そして、おじさんが引きこもってしまった理由を父親から聞いて真はおじさんに感動する。

第3章「その映像を調べてはいけない」ニュータウンと言われた地区の家で殺人事件が発生。父親が息子を殺して川に遺棄したとして、翌日自首してくる。動機は、普段から両親に暴力をふるい、昨晩は父親が首を絞められ、両親を殺して自分も死ぬと言ったので、とっさに包丁で刺し殺したと証言。若い隈島刑事は半ば同情して信じ切るが、ベテランの戸頃刑事は信じ切るな、事実だけを追及しろと忠告。結局家からは血痕など見つからず、死体も見つからないことから証拠不十分で釈放される。隈島刑事は、自首の動機が、息子がいなくなったことはすぐ知れ渡り、隠しおおせないと思ったからと供述していたことから、昨日時点では簡単に遺体が見つかる川には捨てずに、山の可能性が高いと考え、現場の家に行き、車にドライブレコーダーがあることに気づき、徹底的に調べ、その映像は矢張り川ではなく山方面という証拠をつかむ。父親は同意したが、棄てた場所は忘れたと主張。逮捕には至らなかった。

終章「祈りの声を繋いではいけない」3章までの事件の真実が明かされる。息子を殺したと言っていた父親は病気で亡くなり、今は母親一人住まい。その母親は「行ってきます」と言って家を出て明神の滝に向かう。殺した息子は川でも山でもなく、床下に埋めていたのだ。そして車で運んで山に埋めた遺体は、実は床下に埋まっていた若い女性の遺体だった。その女性こそ、第1章で行方不明だった緋里花であり、両親が留守中に息子がSNSで出会って殺してしまい、床視野に埋めていたのだった。両親はスマホの映像を見てそれを確信するのであった。桃花が避難小屋の冷凍庫で見た遺体は、小屋の管理人の父親が殺した妻の遺体で、それを見られてしまった男が桃花を殺し、冷凍庫に隠して自分は自殺。

滝に向かった母親は、そこで口のきけない真に出会う。真はその母親が落とし物をしているのを拾い、住所を確認し届けに行く。するとその家は燃えていて、その母親が家の中にいるのを発見し、助け出そうと家に入り、大声で助けを求める。声が出たのだ。母親は家に火をつけて自分も死に、床下にある息子の遺体が見つかり、全てを清算したかったのだが、真が来たおかげで命が助かり、家も全勝することがなかった。結局緋里花を殺した犯人=息子も、息子を殺した犯人=母親も警察が知ることなく話は終わる。

道尾氏は本当にこういう連作小説を作るのはうまく、話にも何ら齟齬がない、計算しつくされたものになっている。これはすごい技としか言いようがない。またまた道尾作品を読みたくなる自分でした。

今日はこの辺で。