中山七里「棘の家」

多作の中山先生ですか、私も随分読んでしまったので、新作を探していたのですが、図書館で見つけたのが本作「棘の家」。棘の家とはどんな意味なんだろうと読み進めていくと、さすがにタイトルのつけ方がうまいものです。正に刺々しい様相を呈していく主人公一家の物語。

穂刈慎一は中学校の教師で2年生のクラスを受け持つが、いじめはどこにもあるもの、ある女子生徒からクラスの男子生徒がいじめられていることを相談され、担任として責任持って対応するからと約束する。本作はこのいじめ問題が主題かと思いきや、突然穂刈の家庭に重大な問題が発生し、そちらが主題となって話が進むことになる。

家庭ではそぶりを見せなかった小学校6年生の娘がいじめを原因に飛び降り自殺を図り、幸運にも助かるのだが、いじめの実行犯の女の子がネットで名前が明かされ、加害者家族も騒動に巻き込まれる。そして、いじめの主犯格の少女が何者かに殺害され、穂刈家の中二の息子が重要参考人として警察に拘留される。息子は犯行を否認するが、アリバイがなくなかなか解放されない。穂刈家は、家族全員が何かを隠しているような刺々しい雰囲気になってしまう。穂刈は教師としての自分と父親としての自分の葛藤に悩み、妻はそんな穂刈を責め立てる。自殺を図った娘は引きこもり、会話をしようとしない。

ここまではいいのですが、妻が息子を心配している割には、年下の男と会ったり、娘が小学校6年生にもかかわらず、かなり巧妙な企てをしたりと、ちょっと非現実的な場面が出てくるのは腰砕け。

息子の疑いを晴らすため穂刈はそれなりに奮闘するが、最後刑事並みに思考を働かすところも非現実的。兄が自分の受験のための環境を取り戻すために妹を殺める展開も安易すぎるのではないかと思った次第。

さすがに雑誌に何本も掛け持ちで書いたり、書下ろしも書いたりと、超繁忙の中山先生ですが、「護られなかった者たちへ」のような良作を次には期待しています。

今日はこの辺で。