電通過労自死関係書籍2冊「電通事件」「過労死ゼロ社会を目指して」

2015年に電通の新入社員、高橋まつりさんが過労自死した事件を扱った書籍二冊読了。
北健一著「電通事件」は100ページほどの短篇。電通という会社の歴史的にもつ風土、習慣がこの事件を起こしていることを語っています。常にお客さんファーストの体質、そのために無理な顧客の要望を引き受け、それが社員の過重労働に繋がっているという伝統的な体質を直さなければまた同じことが繰り返されることを暗示しています。私のいる会社も、結局は顧客の要望で時間外が増えることがままありますが、いま日本社会に蔓延する顧客ファーストを、従業員ファーストに変えていかなければ働き方改革はなかなか進まないと思われます。
もう一冊は、高橋まつりさんのお母様の幸美さんと、個々の事件を担当した川人博弁護士の共著「過労死ゼロの社会を~高橋まつりさんはなぜ亡くなったのか~」
さいころから勉強ができて、活発で、お母さん思いのまつりさんがなぜ過労自死しなければならなかったのかが、最も身近なお母さんから語られ、胸を打ちます。本来精神的にも強いと思われるまつりさんが追いつめられる状況というのが、これは言葉では表せない、肉体的、精神的な疲れあったとしか言いようがありません。こういう状況に追い込まれる人の逃げ場は、本来であればたくさんあるはずです、会社を休む、会社を辞める等々。ですが、その判断もつかなくなるほどの疲労困憊は、経験した人にしかわからない感情なのでしょう。死しか逃げ道を思いつかない状態に追い込まれる異常さ。こういう人をなんとかフォローできなかったものか?電通という会社にそういう風土がなかったということでしょう。
この本でも「顧客ファースト」からの脱却について川人弁護士が説いています。顧客の無理な要求に対して、電通という巨大企業でも断れない体質、これは正しく「鬼十則」からきている教えですが、この考えは日本中のどこの会社も持っているものです。それが過度なサービスとなり、長時間労働の根源でもあります。そろそろ、日本社会も「お客様は神様」から「従業員は神様」に移行して、どの会社もWIN・WINになる社会を目指したいものです。でなければ、働き方改革は決して実現しません。生産性を上げることが最終目的になっている今の働き方改革では、決して従業員の本当の働き方改革は実現しないはずです。
典型的な例が、コンビニの深夜営業。顧客ファーストで、深夜に買い物する方の利便性を考えて24時間営業をしているはずですが、決して生産性向上にはなっていません。逆に人件費増につながり生産性は低下しているのが現状です。深夜営業しているから行くのであって、営業していなければ営業しているときにみなさん買い物するでしょう。コンビニについては、顧客ファーストとともに、親会社ファーストの考えも捨ててほしいものです。
話がそれましたが、電通事件とその前のワタミ事件での新入社員の過労死自死が大きなきっかけとなり、時間外規制が法制化されました。これを真に実現するための意識改革をみんなで進める必要があります。
今日はこの辺で